コード理論は何のための理論か【第三回】

音楽理論というのは、文学理論と性格を異にしている。音楽理論を文章芸術の分野に無理やり当てはめると、「小説の作法」だとか、それに相当するものになる。

「大量の人物を登場させて、それぞれに一気にカギカッコで喋らせたら、誰が話しているのか分かりません」

だが、意図的に誰が喋っているか分からせないようにしたいのなら、「~は」あるいは「と言った」を省略し、場面にたくさん人を出せば良いのだ。

音楽理論にも色々流派はあり、例外はあるが、イデオロギー としては「良い作品を作る」ための理論である。

コード進行とは何か考える前に

コード進行とは何か考える前に、コード進行の目的別に分類する。そうすれば、ややこしい勘違いを回避できる。

曲の抽象化の際に用いられる操作概念としてのコード進行

ポップスなどは特に、曲の要素はシンプルに出来ている。

(無意識にそのカウンターなのだろうが、ニコニコのボーカロイドの曲は音数がやたらと多かった)

「伴奏・メロディ」つまりメインとサブという区切り方で、世の中の大半のポップスはつくられている。

メロディがCメジャーなら、伴奏(コード進行に寄っている)も、そのメロディとバッティングしない(不協和音を作らない)ことをルールに、伴奏(和音化のための音)を追加していく。

この作業を逆さまにして、最初にコード進行をつくってから、そこから「コード進行にバッティングしないメロディ」を作り出していくこともできる。

ポップスの多くはそう作曲されている。

不協和音は完全排除を至高とされているわけではないが、「不協和音を積極的に活用して、ポップスを作ろう」というノウハウは未だにない。

(流行ったためしもない)

「曲のコード進行が分かる」という表現が曲者で、実際は「コード(和音)という要素に、曲を単純化して抽象化する」という作業に該当する。

ただ、そのコード理論を用いて作られた曲が世の中に溢れるため、こういった作業が「正」「真」として機能する。

ある楽曲があったとして、その曲のアナロゴン(享楽)は一体なんのか。

我々はなぜその曲を聞くのか。その曲が好きなのか。

「よく分からないがコードを取り出してみよう」という分析・努力は、無為ではない。

作曲のためのコード進行

メロディがある。あるいはコードが予め決めてある。響きの薄さをカバーするために、和音=コードを追加する。

コード理論は色眼鏡に過ぎないが、この色眼鏡はその単純さ故に便利である。作曲者にとっても、あるいは鑑賞者にとっても。

ある一つのなんてことはないメロディが、コードをつけるだけで劇的になったり、重厚になったりする。

「盛り上げるため」だとか「切なくする」「解決感を与える」などの目的があり、その目的に沿っていると思われるコードを作曲者は提供する。

(この解決感というのは、ポップスを語る上で頻出するターム)

サティのサラバンドなど、あえて解決感を与えずに曲を続けるものもあるが、大抵の曲は「解決」して終わる。

(解決というのは、「終止感がある」とも言いかえられる)

即興のためのコード進行

ジャズやバロックの「即興」には、ルールが設けられている。設けないことも可能だが、それだと聴いていて楽しいものにならない。

ジャズというのは、確かに「ジャズらしい音色」なるものもあるが、「ある一定のルールのもの行われる音楽的ゲーム」である。その上で、「ジャズらしい進行」がある。

モード旋法など、コードではなくモードで即興をすることもあるが、ジャズを中心に勃興した「コード」という概念がポピュラー音楽に広まり、インスタントで有用な作曲技法として広まった。

モード旋法にしたって、特性音という旋法的用法制限=ルール=禁則がある。その禁則をやぶってもよいが、それはゲームのルールに従っていることにならない。

モード旋法の目的は、バロックー古典派ーロマン派あたりの年代に確立した「調性」へと反抗すること。だから、解決音あるいは解決音に近い音は回避する。

話は逸れたが、この即興のためのルールとして、コード進行概念はジャズに定着した。今でもそれは変わらない。

コードに合う/合わない

音と音が半音衝突したり、トライトーンが出てくると、協和的な音とはならない。耳に心地よいものにはならない。

これを最低限避けておけば、意図せぬ不協和音を回避できる。

「コードの合う\合わないメロディ」に、それ以上の意味はない。

もちろん、「優れた対旋律」なるものは存在するだろうが、私にはそれを語る力がない。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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