ポリコレ的に正しい”テロリスト”の用法はあるか

日本時間だと21:46分に、1つ目の飛行機が。日本時間22:03分に、ワールドトレードセンターに2つめの飛行機が激突した。
テロの翌日、小学校でその話題でひとしきり盛り上がったことを覚えている。ただ小学生にとってテロというのはよくわからないトピックであり、すぐに話題が冷めたのをなんとなく覚えている。
私が「テロ」「テロリスト」という言葉を知ったのはそのあたりだが、テロという言葉は911以前よりあった。いつごろ一般化したのは分からないが…
誰がテロリストなのか
911同時多発テロの際、2機目がビルに衝突した際、それを撮影していた者が「テロだ!」と叫んでいた動画を見たことがある。
一機目激突時の「事故かも知れない」という可能性の想定が、2機目で潰えたことが伺える。
「大量殺人をしたから、テロリスト」なのではなく、あくまでも「社会的・政治的な、何かの目的のために暴力を用いて人を(特に市民)脅したり、殺したりする行為」がテロである。
つまり、京アニ放火事件を起こした青葉真司はテロリストじゃないし、津山事件の犯人もテロリストではなくなる。
もちろんこの「非テロリスト認定」は、後から修正されうる。津山事件の犯人はともかく、2019年8月22日現在、青葉真司は意識をわずかに回復しただけで、意思疎通ができていない。……
植松聖はテロリストか?
ややこしい立場に立っているのが、植松聖だ。彼には「重度知的障害者をこれ以上生かさない」というマニフェスト・主張があったが、彼は同時に「知的障害者の殺害」そのものも目的としている。
イスラム原理主義者のテロはあくまでも「目的の達成のための殺人」である。イスラム国が同性愛者の男性をビルの屋上から突き落として殺害したが、あれはテロではなく処刑:Excutionに過ぎない。
植松は事件を起こした相模原の障害者施設で働いていたが、彼が仮に「人生が嫌になったので、前の施設の住人を道連れにしようと思った」「あいつらに嫌な思いをさせられたから、仕返しをしようと思った」と語ったならば、植松をテロリスト認定するのは難しくなる。
2017年のラスベガスで起こった銃乱射事件の犯人ステファン・パドックは、前科もないし、宗教組織・政治団体とのつながり、また過激派思想に傾倒していた痕跡も見つかっていない。しかし、少なからぬ人が彼を”テロリスト”と呼んでいる。カントリー・ミュージックのコンサートが標的となったため、彼を「アメリカ民主党支持者のテロリストだ」と断定したり、カントリー・ミュージックのファン層は主にアメリカの(保守派の)白人であることから、「反白人活動」と見なしたり……。
暗殺とテロ
辞書的な意味を参照すれば、政治家の暗殺などは、個人的な恨みに端を発する者でない限り原則的にテロ認定されても良さそうなものだが、そうはなっていない。思うに、無差別殺害テロの印象が強すぎるのだろう。
アメリカの法典などからも、要人暗殺は十分にテロ認定を導き出せる。しかし、そんなことはめったに(メディアと大衆によっては)なされない。これは、「Terror」が元々「恐怖」「恐怖のもと」を意味することも影響している。
政治家、ヤクザ、大企業の社長が暗殺されようと、一般市民が巻き込まれない限りは「そういうこともあるだろう」と我々は無意識のうちに認識している。
ポリコレとテロ認定
植松よりもややこしいのが、フロリダ州オーランドのゲイナイトクラブで、オマール・マティーンが起こしたケースである。両親はアフガニスタン出身で、彼自身スンニ派のムスリムであり、ISISの思想などに傾倒していたらしいのだが、彼が乱射事件を起こしたゲイバーの常連であり、そこでは普通に会談を楽しんでいた…。
少なくないメディアが、オマール・マティーンを「彼はゲイだったのではないか?」と推察している。その他にも、高校時代から感情面に問題があったことをかき立てたり、妻に対して暴力的だったと書いたり…。
仮にマティーンがゲイで、自己嫌悪を引き金に銃乱射事件を起こしたのならば、彼はイスラムのテロリスト戦士ではなくなり、テロリストではなくなる。
彼がゲイだったのかどうか、どのくらいイスラム過激派に同調していたのかは、今から調べるのは難しい。メディアの「同性愛者説」を、反イスラム的感情を国民に起こさせないようにする情報操作と指摘する論客もいるし、単純に注目を集めてセンセーショナルに仕立て挙げてるという指摘もある。
(ある種のポリコレ批判)
ともあれ、テロリスト認定されるには、「自立した責任能力ある大人」として見なしうることが必要条件なのは間違いないだろう。小さい子供に爆弾を持たせて自爆する事件があっても、その子供はテロリストとは呼ばれないし、認識されない。

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