誇大広告と常識と強迫観念

誇大広告を最近、仕事で扱った。夜のお店である。どのお店も「リピート率80%」「独自ルートで女性を確保」「地域No. 1」「ルックス・マナー・サービス全てが厳選された」「極上美人ばかり在籍」「セレブ妻」「不倫を求める妻」「ピュアな女の子」「清楚系」「業界未経験素人ばかり」。

全部、嘘である。まず、夜のお店に清楚な女の子がいるはずない。人妻はいるかも知れないが、大半はシングルマザーである。あるいは単なる独身。

悲しいのは、誰かが誇大広告をはじめてしまうと、周りの店もその誇大広告ゲームに参加しなければいけなくなることだ。隣の店が「性格最高のSSSクラスの美人を厳選」しているのに、こちらだけ「平均以下の容姿を、化粧でごまかして」いると正直にはなれない。負けじと「リピート率エリアNo. 1」と誇大広告を打たねばならなくなる。

この手の誇大広告競争は、就活や恋愛、デートアプリのスペック記載の際にも発生する。共通するのは、最初に盛ったやつがいること。

嘘は必要である

最初にスペック・内容を盛って表現した人がいるせいで、皆も嘘をつかなければいけない状況になる。英語圏でWhite Lie なるワードがあるが、このワードは「嘘をつくことが、良心にもとる」シチュエーションがあると民衆が信じていることを示している。

ジジェクが講演かなにかで語っていたが、ジジェクはかつて公開討論中に相手に対して非礼を働いた。ジジェクは討論終わりに、非礼を働いた相手に謝りにいたt。その人は

「謝りにこなくてよかったのに。全然気にしていないですよ」とジジェクに言った。

ジジェク曰く、この「全然気にしていないよ」は嘘であり、「謝りにこなくてよかったのに」も嘘である。そして、この2つの言明が嘘であることは、二人共わかっている。しかし、「それは嘘ではないですか」と指摘することに意義はない。

私はこの嘘を美しいと思う。モラルに反しているとも思わない。

さきほどの誇大広告にしろ、「超絶美人ばかりです」は言い過ぎでも、「ブサイクばかりの店」では、キャストの女性陣の士気にかかわるだろう。意図的に”醜い”とされる人を集めたお店でない限り、「美人のお店」と紹介して良いのだ。

パフォーマティブな意図

男女の嗜好の差について調べ上げられたデータがあったとする。色の好みだとか、生活習慣だとか、好まれる音楽・映画の差だとか。

単なる客観的なデータであっても、それは男女差別の言説となりうる。なぜなら、「男女間における差」を述べる言説が、男女の社会における役割分担を支持する言説になりうるからだ。

プログラムやアルゴリズムでない限り、人の言説は「意図」のファクターから逃れられない。男女差のデータをただ読み上げるだけでも、「男女差別主義者」と見なされうる。実際にあなたがどうかは関係がなく。

誰か嫌いな人がいるとして、人は単に「その人が嫌いである」ことを表明できない。「嫌いということで、政治的に達成したいこと」をうがってはかられる。

ここでいう政治というのは、支持政党がどれかという話ではなく、社会的・非私的ななる意味である。政治を音楽に持ち込むなと主張する人は多いが、非政治的な言説はこの意味において存在し得ない。

詐欺とリピーター

表示と全然違うスペックの商品が届いたとき、大半の人間は怒る。二度と同じ店・会社からものを買おうと思わないだろう。

だが、リピーターを求めないビジネスモデルなら、誇大広告は効力を発揮する。

営業でいう売りっぱなし。常に新規顧客を開拓しなければいけない大変さはあるが、代わりにメンテナンスをせずに済む。

黄色い歯とホワイトニング

歯というのは、ほっとけば黄色くなるものである。ただし、ホワイトニングが当たり前になると、歯が真っ白ではないだけでアメリカでは不潔な印象を与える。

歯のホワイトニングは、広告の力なくしてはなしえなかった社会現象だろうが、広告及びメディアのイメージは、我々に「こうでなければならない」強迫観念を与える。

日本だと、化粧や体臭にまつわるものが代表例だろう。「あなたは臭くないですか?」と尋ねることは、臭くなくとも「自分は臭いかも知れない」なる懸念を抱かせる。

「かわいいは作れる」ならぬ「常識は作れる」である。

露出狂と常識

「服を着たくないから」という理由で、服を着ないことはありえるが、服を着ないまま街に繰り出すとなると、話が変わってくる。世間はそれを狂人と呼ぶ。

「常識的に考えろ」と言ってしまえば終わりだが、「現代社会においては肌の露出・とくに性器の露出はある種の暴力だととらえられているから」と考えると、そこから派生してさらなる疑問を提出できる。

では、いかなる理由で性器の露出が好ましいものでなくなったのか? おそらくは、最初は性器の保護から始まっている。その後に「性的な規範」が誕生し、いつのまにか「性器=露出すべきでないもの」=タブー化が始まったのだろう。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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