「クラシック音楽」の定義のややこしさと、新概念の提言【第五回】

ジョン・ウィリアムズ は、主にオーケストラを使って映画音楽を書いている。すると、ジョン・ウィリアムズはクラシック音楽の作曲家だろうか?

そう考えている人もいるし、考えることなくそう言っている人もいる。

考えないと言うのは、「クラシック音楽の定義・用法・使用例ってなんだろう?」という問いが、一度でも頭にかすめたことがあるかどうかである。

考えなくても生きていける。しかし私は考える。

クラシック音楽の意味・用法

クラシック音楽の代表的な意味・用法は、3つある。

  1. バロック時代〜ロマン派後期までの西洋の音楽
  2. バロック時代〜シェーンベルクを創始者とする「現代音楽」の登場初期を含む、西洋の音楽
  3. バロック時代〜現在まで、西洋の伝統的な楽器を用いて、伝統的なスタイルを踏襲していると思われている音楽

(たまに、バロックより前のルネサンス音楽が入ったりする。特に後期)

クラシック音楽ファンの間では、一番目の用法が最もポピュラーである。非調性音楽を価値あるものとして見なすか否かはあまり関係がない。

3はあまり見かけないが、ここでコルンゴルトも久石譲も「クラシック作曲家」として扱われている。便宜的なものかも知れないが、この認識も珍しくは無い。一般人からすれば、なんとなくクラシック音楽らしければクラシック音楽になる。

「クラシック音楽」はなぜややこしいか 

最初に結論を言えば、指す範囲が広すぎるからだ。

バッハの時代に、クラシック音楽という概念はあっただろうか? 少なくとも、バッハが自分のことをクラシック音楽の作曲家だとは思っていないことは確実である。単に作曲家(バッハは演奏家でもあったが)だと思っていただろう。

また、シェーンベルクがそれまで西洋の伝統的な音楽上の概念である調性を積極的に破壊しようとしたことも、ややこしさに拍車をかけている。

いわゆる現代音楽というタームにしろ、単に「現代」に作られた音楽であるというニュアンスが紛れ込んでしまう(英語でも、Modern Music/Contemporary Musicと呼ばれたりする)。

(私がもっとも混乱が少ないだろうと思うタームは、”前衛音楽”=アバンギャルド音楽)

また、これは英語圏でのややこしさだが、インドは自国の伝統音楽を「Indian Classicsl Music」と呼んだり、アメリカ人が「Jazz is American Classical Music」と言ったりする。また、日本だとポピュラー音楽・ポップスに分類されるアーティストの作品が、「クラシック」と呼ばれたりもしている。

(Jay-Zは、自分のファーストアルバムをクラシックと自称すらする)

コンテンポラリー・クラシカル・ミュージックなんて矛盾してるように見える表現もある。

また、古典派時代は英語で「Classical Era」である。つまり、古典派時代を特定して呼びたいときは「Classical Music on Cassicsl Era」。ややこしい。

新たな分類法

これは私からの提言だが、新たな概念を作ってしまえば良い。歴史や音楽的な形式・イデオロギー に縛られない言葉が望ましい。

シュトックハウゼンは、現代音楽の作者だと見なされることはあっても、クラシック音楽の作品だと見なされることは稀である。彼の作風によることも多いが、一つの大きな理由はシュトックハウゼン が電子音楽を作っているからだろう。

私が提言するのは、アコースティック音楽/ノンアコースティック音楽の二分法である。

完全に分離するのは難しい。メシアンの有名な交響曲トゥーランガリラ交響曲は、オンド・マルトノなる電子楽器を使っている。しかし、それ以外はアコースティック楽器である。

また、マイクをアコースティック楽器の前に立ててしまえば、アコースティック 純度は下がる。だが、コンサートホールを音響装置=マイクとも見做せる。

根性論を展開する部活顧問のようで申し訳ないが、大切なのは気持ちだ。「私は今、電子機器を介さないで、楽器から放たれた楽器から来た音を聞いている」と信じられることは、鑑賞の気分に大きく作用する。

ジャズファンの中には、電子楽器を毛嫌いする層が一定以上の割合で存在する。気持ちは分かる。

大変下品な表現で言うと、コンドームを付けているか付けていないかの気持ちの上での区分と同質だ。

将来的に、コンドームを付けているのに付けていないかのような感触を得られるコンドームが発明されても、もっと言えば付けている方が双方共により気持ちいいコンドームが開発されても、「コンドームをつけている」という認識から来る萎えは、発生する。

話はズレるが、アメリカの音楽ヒットチャートを賑わせるのは、ここ十年ずっとヒップホップ あるいはポップである。例外はあれど、この二つはライブでの実演にフォーカスしていない。打ち込みで楽曲を構成するのが主である。

しかし、ライブ動員数のランキングになると、ロックバンドが上位に食い込んでくる。

売り方の違いと言えばそれまでだが、電子楽器であれなんであれ、「今ここで、パフォーマンスされている」と信じられるパフォーマンスへの需要は、人が存在する限り存在し続けるだろう。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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