権力批判を忍ばせる道化師の媚びへつらい

茂木健一郎が、「日本のお笑い芸人はくだらない」と言ったことを覚えているが、メディアの反応は散々なものだった。ほぼ集団リンチの様相を呈していた。

なかにはウーマンラッシュアワーの村本など、茂木の問題提起に好意的なものもあったが、ビートたけしのコメントは印象的だった。

彼は「確かに欧米のテレビを見ていると、政権や王室の批判をバンバンやっていて、それを見ていたら茂木の言うことも分からないでもない。しかし、お笑い芸人の原型である王室お抱えの「道化師」は、王様に媚を売る側面もあった」とインタビューで語っている

「権力批判を、笑いのなかに交えて忍ばせる道化師」という存在には疑問が呈されているらしいが、ビートたけしが行っているのは、どちらかと言うと「思考実験」である。

「現政権・権威を辛辣に批判する道化師が、王室お抱えにはならないだろう」

この知見は、”お笑い芸人と権力批判”のトピックを考えるに当たり、忘れてはならないものだろう。

アジテーションとプロパガンダ

「欧米のお笑い芸人は、積極的に政権批判をする」と茂木は語ったが、「私は民主党員です。現政権は白人至上主義者の政権です」だとか「トランプとトランプ支持者が嫌いです」と言ったって、笑いにならない。ではどうするか?

例が政権批判でないのは申し訳ないが、ここでアメリカの人気テレビホストであるトレバー・ノア(南アフリカ出身のコメディアン)は、南アフリカの政党党首であるジュリウス・マレマの発言

「白人を殺せとは言わない。少なくとも今は。未来は約束できない」

という危険極まりない発言を、ピックアップしている。このシーンの前にトレバー・ノアは、マレマが記者に対して「出ていけ!B*stard !」と変な言い方で言うシーンをピックアップしており、それがマレマの”民族浄化発言”のシリアスさを緩和させる効果を担っている。

(ちなみに、マレマは冗談が分かる人らしく、ノアの反応に対し寛容だった

同じことをアメリカ人が言ったら大問題になるのに、なんで南アフリカの黒人だと”コメディ”になるんだという不満はあるだろう。だが見てほしいのは、この動画中、トレバー・ノアはマレマの発言やスタンスに対し、何も倫理的断定を突きつけていないことに注目すべきである。

(非アジテーション的な言説)

アジテーションをしたって、コメディにはならない。

茂木健一郎も、テレビのバラエティ番組を一新し、朝まで生テレビをやれと言っているわけではない。

茂木が抱いた所感とは「権力の座にいる人の言動をいくつかピックアップして、それに聴衆の意識を向けさせるテレビプログラムが一つもない日本って、どうなんだろう?」だろう。

そこから表現が変化して(正確には、疑問から感想に移行し)、「日本のお笑い芸人は、くだらない。世界基準ではない」とメッセージを発してしまった。茂木は別に欧米のコメディ文化に詳しいわけでもないし、芸術だとかパフォーマンスを語る言葉・ターム・スキルがあるわけでもなかったため、メディアに押しつぶされて終わってしまった。

…欧米の、少なくともアメリカのコメディアン達が、スポンサーやアメリカ国民、政権に対して辛辣でいられるのは、多チャンネル文化と、ペイチャンネルの存在が大きいからという考察を読んだことがある。

ペイチャンネルだと、国民の多数にうけなくとも、一部の熱いファンがいれば成り立つ。スポンサーの目も気にしなくていい(視聴者が支払い主である)。そもそも、アメリカ・英語圏はパイが大きく、尖っていても食っていける。

日本人が特別、権力批判にアレルギーがあるわけでもない。ウーマンラッシュアワーの村本は、全国行脚の独演会を成功させている。

現代アートと道化師仮説

ビートたけしの「道化師論」は、もしかすると現代アートのマーケットにも当てはまるのではないかと時々思う。

どんなに辛辣な表現をしているかのように見えても、見る人を本当に傷つけるような作品を彼らは作らないのではないか?作ったとしても、売れないのではないか?と訝しんでいる。

現代アートの場合は、お客さんが大衆ではなく「一人の購入者」だ。だから、理解者が少なくとも成立したり、むしろ理解者の少なさが成功要因となるスノビッシュな循環もある。しかし、一つの作品の価格が高騰するのは、欲しい人が多数いるからだ。つまり、「欲しい人が一人しか現れない作品は、その一人にとってどれだけ感動的だろうと、価格は高騰しない」ことを意味する。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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