ダニング=クルーガー効果…仮に自分がバカだとしても

ダニング=クルーガー効果は、「バカは自分をバカだと認識できない」のではないかという仮説の検証実験(効果)として世間では有名だが、実験によって得られたもう一つの知見「優秀な人間が、自分を過小評価する傾向にあること」は、それほど有名ではない。

「”優秀”なのに、自分を過小評価するのか?」との疑問が思い浮かぶかも知れないが、優秀であるからこそ、ものを分かっており、自分に足りないところ・欠落しているところが分かる。

smugnorantという新語は、ダニング=クルーガーの知見の片方を、完璧に表現している)

ダニングとクルーガーの実験

ダニングとクルーガーは、1999年に「論理的推論力」(このテストは2回)「英文法」「ユーモアを解する能力」のテストを、彼が授業を受け持つ学生に行った。

ユーモアのテストをどう実施したのか気になったので、実際のダニングとクルーガーが発表した論文を読むと、「Q:人間の男ほどの大きさがあるが、重さが全くないものとは何か? Q:その男の影」という文などを読ませ、何がどう面白かったのか説明させ、教授が採点したと書いてあった。

ジョークはウディ・アレンの映画や、有名コメディアンなどから拝借したと説明があったが、日本人とはユーモアの文化が違うので合点がいかなかった。

(プロのコメディアンなどは、言語性IQが高いらしい)

それに、ジミー大西のような「発想はできるが、説明ができない」タイプの人間を、”知能テスト”上では「才能のないアホ」と識別できないだろう。いわゆる「外れ値」「例外」というやつだ。

しかし、科学は(特に社会科学は)あくまでも統計なので、例外を理由に調査結果の価値を貶めても仕方ないだろう。児童虐待を受けて育っても、特に影響なく、人格も歪まず大人になった人物は大勢いる。その人達のデータ・存在は、児童虐待を正当化できない。なぜなら、統計的に児童虐待の悪影響が顕著に見られるからだ。

引用:Unskilled and Unaware of It

論文の内容を全て紹介はしないが、2回目の「論理推察能力」のテスト採点結果と、自己評価の隔たりをグラフ化したものを引用しておく。ユーモアのテスト採点結果と自己評価の隔たりなどもグラフ化されているので、気になる方は論文を参照してください。

平均は平均ではない

ダニング=クルーガー効果と同様の内容を言っている心理的傾向があり、それはabove average effect(平均以上効果)と呼ばれている。米国の高校生の7%超は、「自分は平均より運転がうまい」と思っており、2%以下の人間だけが「自分は運転が平均よりも下手だ」と思ってるらしい。なお、レイクウォビゴン効果も同じ内容を指す。また、IQに関しても、平均以下の人間は自分のIQ値を過大評価し、平均以上の人間は過小評価する傾向があると調査結果が出ている。

しかし、平均以下効果という「自分の能力を、平均以下に見積もる傾向」も観測されている。どっちが正しいのか迷ってしまうだろうが、人が「平均以下」だと思う傾向があるのは、あくまでも自分の得意分野である。

擁護(?)ではないが、「得意分野」あるいはかつて勉強していた分野において、人は無意識に比較対象を最上位・上位人物に設定してしまうのは影響しているだろう。そもそも、無知ならばその「比較対象の設定」ができない。

陰謀論についていくつか意見を当サイトで述べてきたが、なぜあんなにも陰謀論は民衆に人気なのか、ここに一因をみとれるだろう。「私は優秀であり、平均以上である。しかし、それに見合った地位・名誉・富・結果を得られていない」そして病理的な”原因”を見つけてしまうのだ。…少し前まで「なぜこれほど多くの人が、陰謀論・陰謀史観に惹かれるのだろう?」と不思議がっていたが、因果関係が逆だった。まず信じたいものがあり、その”証拠”を集めているのだ。

IQテストを受けたら詐欺だった話

「the bell curve」というコントラバーシャルな本があるが、著者のチャールズ・マレーは、”エンジニアや社長、学者などはIQが平均して高く、仕事内容が単純になればなるほど、従業する者のIQが低い傾向にある”長年の心理学会の研究成果を著書内でまとめ上げている。IQは人間の知能を決定するものでは決してないが(そう考えるのは、素朴に過ぎる)アメリカ軍は、応募者のIQが81以下の場合、入隊させない方針をとっている。

ジョーダン・ピーターソンは「保守派の『頭が悪いなら一生懸命働けば(努力すれば)なんとかなる』という見解も、リベラルの『人と人の間で知能の差なんかない』というのと、両方間違っている」と言っている。

IQが生涯通してあまり変わらないのも、人の人生に大きな影響を及ぼしているのも、IQの高さと収入の高さが比例し、失業率とは反比例しているというリサーチは、古くより学術的に認められた調査成果だ。

IQの高い両親の子は、IQが高い可能性がより高いことも判明しているし、「努力」とは何なのだろう?と思ってしまう。

(ちなみに、「国際IQレジストリ」というサイトで、IQテストを受けたことがあるのだが、無料だと思っていたらテスト終了後に5ユーロを請求された。もちろん払っていない。

人の時間を奪うことは、人の金を奪うに等しい。初めての詐欺体験だった)

…ハードウェアの性能向上はほぼ不可能であっても、ソフトウェア(知恵・知見・経験・知識・セオリー)の性能向上は出来る。それにリソースを投入するしかない。

桜田真助
  • 桜田真助
  • 92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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