食文化の輸出の困難さ~餃子の王将の大連撤退に思うこと~

「餃子の王将」などで提供される”中華料理”は、本場の中華料理とは違う。

餃子の王将の大連支店が2014年に撤退したのは記憶に新しいところだ。

王将フードサービスの渡辺直人代表取締役は、日本の味が中国で受け入れられなかったとメディアに語っている。

2017年になって、王将フードサービスは台湾の高雄市に進出した。ここで海外で飲食店を経営するノウハウを手に入れ、おそらくはまた本土中国に再進出する計画を立てていると思われる。

しかしここで思うのだが、餃子の王将の中国進出の失敗は、渡辺社長が語ったように、ほんとうに日本人と中国人の味覚の違いが原因なのか?

食のスタイルと味覚の関係について、少し意見と見解を述べる。

食と”スタイル”

一般的にアメリカ人は、あんこが嫌いだ。こしあんだろうと粒あんだろうと大差はない。

アメリカには”甘い豆”を食べる習慣が無い。

それに比べ、カリブ海の国々やアジア諸国は豆を甘く煮付けて食べる習慣があるため、アメリカと違ってあんこは比較的受け入れてもらいやすい。

アメリカ人ももちろん豆は食べる。ホテルの朝食などで煮込まれた赤色の豆料理を見たことがあると思うが、あれはベイクドビーンズと言って、イギリスやアイルランド、アメリカではポピュラーな料理。

当然、イギリスのアングロ食文化を受け継いだアメリカでも、ベイクドビーンズはポピュラーである。

そして皆さんもご存知の通り、アメリカ人は甘い物が好きだ。しかし、あんことなると途端にダメになる。

不思議な現象だろうか? そうではないと私は考える。

自分の胸に手を当てて(?)思い返してほしいのだが、日本人もライスプディングには拒否感を示す。

ライスプディングとは、米を牛乳と砂糖・ジャムなどで煮た料理だが、日本人は”甘い米”にどうも違和感を感じる。

自分も一度ライスプディングを食べたことがあるが、米をいつだって食べているハズなのに、同じ”米”を食べている気がしなかった。もっとなにか異国の素材を食べているようだった。

特殊な経験を語ったが、実際にライスプディングを食べたことのない人でも、日本人の食欲をそそりそうにない食べ物であることは想像できるだろう。

似ているからこその違和感

中華料理と一口に言っても、いわゆる”日本料理”と”沖縄料理”が違うように(あるいは、もっと)、地域で様々な料理がある。

一般的に中国人は焼き餃子を食べないが、鍋貼(グオティエ)という焼き餃子もあるにはある。

ただ、グオティエは日本で言うたこ焼きや、たい焼きなどの扱いと似ていて、屋台のファストフードとして提供されるものである。

韓国人は餃子のことを饅頭(マンドゥ)と言うが、特に断りが無い限り、水餃子を指す。

皮はぶ厚くつして、大量に作って、家族で食べていく。中国の餃子の消費スタイルもほぼ同様。

餃子の王将が中国で受け入れられなかったのは、こういった”違和感”のようなものの積み重ねが影響したのではないか?

”味が受け入れられなかった”というのは、表現として的を少し外れていると思う。

まず、中国には餃子をおかずにご飯を食べる習慣もないし、餃子の皮はもっとぶ厚いもの。エビチリに至っては存在しない。

変に器や看板・料理の雰囲気が、普段食べている物に近いからこそ敬遠されたのだろうと推測できる。

2017年時点で50店舗近く中国でお店を構えられたcoco壱番屋のように、餃子の王将が中国で受け入れられることはなかった。

食文化の輸出について~

コーラが日本に輸入されはじめた当初、日本人は「薬のような味がする」として敬遠していた。今ではコーラは皆に愛される飲料だが、出てきた当初はキワモノ扱いだった。

(ただ、コーラも元々はアメリカで薬として販売されたものである。”薬のような味がする”といった感想も、そうおかしくはない)。

焼肉も元々は韓国料理で、戦後に日本で広まった料理だが、肉を網で焼いて、そこから皿に移して食べるスタイルの料理が浸透するには、20年~30年とかかっている。

もともとすき焼き文化がある日本でもそうなのだから、食文化の輸出というのは本当に一大事業である。

アメリカの寿司・ラーメンブームにしろ、日本のパクチーブームにしろ、それまで何十年と提供し続けた先駆者がいてこそ発生する。

新しい食べ物の需要

新しい食べ物が、広くその国の国民に受け入れられるには長大な期間が必要である。

インドの人は、自分たちが”カレー”を食べているんだという認識がない。

もちろんカレーはあるが、それは調理法やスタイルであり、カレー料理ではない。

(日本人が日本料理を、”しょうゆ料理”と認識していないのと同様)

ふだん何気なく食べている食べ物の形式や、レシピに使われる調味料など、思い込みや前提を捨てて、まっさらな状態で一度捉えなおしてみてはいかがだろうか。

(衣と油まみれのファミチキなんて、もはやフライドチキンと呼べるのか?)

きっと新たな発見や、気づきがあるだろう。

桜田真助
  • 桜田真助
  • 92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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