ジェニーハイは「小籔千豊物語」である

Bazookaなる小籔千豊司会のスカパーの番組からジェニーハイというバンドは生まれた。
番組発のバンドというとブラックビスケッツだとかが思い浮かぶかも知れないが、ジェニーハイは番組企画を飛び越えた水準に達している。
まず、メンバーが面白い。お笑い芸人二人にプロのミュージシャン二人、現代音楽の作曲家が一人という5人編成のバンドは、世界でも類を見ないだろう。
ハンターハンターで幻影旅団の団長であるクロロは、「蜘蛛の頭」と団員から言われていた。蜘蛛の脚は取り替えが効くが、頭は変えられない。変わればクモ=幻影旅団ではなくなる。
(あるいは、幻影旅団が維持できなくなる)
ジェニーハイにおけるクロロは誰なのだろうか? バンドが欠けてしまってはならない人物は誰なのか?
(ここで言う「欠けてしまってはならない」の意味だが、例えば「この人がいなくなってしまえば、それはもうジェニーハイではない」といえる人物は誰なのか)
五人のうち、一番大切な人から発表していく。
最も重要なメンバー:小籔千豊
ジェニーハイというのは、物語として見れば「小籔千豊の物語」である。彼はドラマーだが、もともとチャットモンチーの臨時ドラマーとして急遽ドラムを始めたという経緯がある。
ジェニーハイというバンドは、小籔がたまたまコヤブソニックなる音楽フェスを主催していなければ、そこでチャットモンチーのドラムが急に辞めることにならなければ、誕生しなかったバンドと言える。
大人になってからドラムを初めて、そこで猛練習をしてバンド結成から一年足らずでミュージックステーションに登場した経緯は、なかなかにドラマチックだ。
人としても、小籔は残りのメンバーと違いサラリーマン気質なのも目立つ要因になっている。くっきーはお笑い芸人だが、いわゆるアーティストよりもアーティストらしい。
小籔は芸術家気質ではないが、その気質がバンドの人間関係のバランス感覚をとる要因になっている。芸術家気質ばかりが集まると、喧嘩が絶えない。
仮に、ジェニーハイの結成〜活動の記録をドラマやノンフィクション小説にするならば、小藪に割かれるページは一番多くなるし、主人公として登場するのは間違いない。
二番目に重要なメンバー:川谷絵音
最初はプロデューサーとして打診されていたのが、小籔とくっきー!の交渉によりプロデューサー兼ギタリストになった。今のところ、曲作りはすべて川谷絵音が担当している。
インディゴラエンド・ゲスの極み乙女と、インストバンドであるイチコロを合わせれば4つめのバンドになるが、なんとかやりくりしているようだ。
元々小籔が川谷絵音を誘ったのも、「ゲスの極み乙女を聞いていていいなと思った」からである。
ジェニーハイの曲は、川谷絵音がギターボーカルとして参加するゲスの極み乙女の延長線上にあるが、ベースとドラムとヴォーカルの技術的制約により、ゲスの極み乙女よりも音はシンプルになっている。
ただ、小藪・くっきー!・中嶋イッキュウの技術はだんだんと向上しているので、曲ももっと難易度は今後上がっていくだろう。
アイドルではないが、ジェニーハイは「バンドメンバーの成長を観察できる」珍しい集団だ。今後も世界の何処かで「技術的に優れた人を集めたバンド」近年ならばヘビーメタルの神バンドのような集団は今後も誕生するだろうが、「ほとんど初心者とガチプロの混成バンド」が誕生するプロジェクトは今後50年のうちにもう一つ出るかどうかも分からない。
(ジェニーハイは曲も面白いが、物語・プロジェクトとしても面白い)
三番目に重要なメンバー:新垣隆
川谷絵音との「炎上繋がり」及び技術・腕を見込まれて参加したメンバー。キーボーディストとしては、世界でもかなり上位の腕前。もっと上手いキーボーディストはいるだろうが、新垣隆氏がトップクラスのプレイヤーなのは間違いない。
ネームバリューと話題性もそうだし、技術的に代替がきかないという意味で、三番目に重要なメンバーだと私は位置づけた。プレイヤーとしての突出度なら、ジェニーハイのなかで一番上なのもポイントだ。
「ロックバンドに参加する現代音楽家」という世界的にも珍しいことが起きている。
(現場などだと、歓声が一番大きいのがガッキー=新垣隆氏だそうだ)
四番目に重要なメンバー:中嶋イッキュウ
最初はなかなか川谷絵音の作る曲に苦労していたが、2020年に行われたライブを見るとかなり順応していた。練習も言わないだけでかなりしていることが伺える。
通常、バンドというのはヴォーカルが一番有名になるが、ジェニーハイの場合はヴォーカルの知名度が一番低いという珍しい現象が発生している。
ヴォーカルにも関わらず新垣隆氏よりも重要度が低いのは、技術ポイントで負けているからだ。Bazookaのレギュラーだったイッキュウ氏だが、今のところそれほどプロのミュージシャンとして貢献できてはいない。これからに期待である。
五番目に重要なメンバー:くっきー!
面白い人だが、元々バンドをやっていた人であり、物語性が薄い。小籔はジェニーハイで評価・見られ方が変わったかだろうが、くっきーはもともと多才で「アーティスト・芸術家」として評価が高かったのもあり、くっきーの見られ方にそれほど変化はない。
ただし、ベースはかなり上達している。五番目に重要なメンバーとしたが、人としては私はくっきー氏が一番好きである。
小籔がクロロ・ルシルフルである
繰り返すが、ジェニーハイとは「小籔千豊物語」であり、彼が主人公である。小籔千豊氏はくっきー!のように元々バンド・楽器をやっていた人ではなく、数奇なめぐり合わせからミュージシャンになった。
小藪のミュージシャンとしての物語を楽しむためのバンド、それがジェニーハイだ。

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