キム・ジョンギの天才をどう称えるべきなのか

韓国のイラストレーター、キム・ジョンギは天才である。

絵の好みだとか、画家それぞれが目指している方向性は違うだろうが、今生きている人間の中で、世界で最も才能に恵まれている画家であることに疑いはない。

ただ私はキム・ジョンギのことを考えるとき、いつも彼の天才と才能をどう称えるべきなのか迷う。

別に私は美術評論家ではないが、こんなことを考えだした経緯を説明する。

キム・ジョンギの圧倒的な才能と、セーム・シュルト

キックボクシングのプロモーション「K-1」が負債を抱えて倒産した原因の一つが、セーム・シュルトの圧倒的な長期支配ではないかと巷では囁かれている。

シュルトは212cmもある巨漢で、190cmを超える他のヘビー級キックボクサーが小柄に見えるほどの大きさである。

身長だけなら、チェ・ホンマンやノルキヤなど並ぶものはいたのだが、シュルトが凄かったのは動きが緩慢になりがちな巨人であるのにも関わらず、機敏でスタミナもあったことだ。

パワーも並外れており、レイ・セフォーなどはジャブ一発でノックアウトされてしまった。

芸術とコンバット・スポーツを比較しても仕方がないのは分かっているが、傑出度だけで言えば、キム・ジョンギはセーム・シュルトの天才度を上回っているかもしれない。

キム・ジョンギは世界中で人気だが、シュルトはバダ・ハリやピーター・アーツに比べ、べらぼうに人気がなかった。

理由は、シュルトの理不尽なまでのアドバンテージ・優位性にある。

シュルトは、圧倒的なリーチからジャブと前蹴りを繰り出し、まず並の選手はそれでやられる。対戦相手が頑張ってなかに入ろうとも、下がりながらのジャブでやっつけてしまう。

身長も才能のうちだが、見てる方もこれではつまらない。

「シュルトがK-1を潰した」は言い過ぎだろうが、かつてのシュルトの位置にバダハリが座っていたなら、K-1はどうなっていたのだろうと思う。
(バダハリも”天才”だが、シュルトには到底及ばない)

キム・ジョンギに秘密はない

こちらのKazone Artというオンラインのアートスクールで、キム・ジョンギが画の書き方を教えるビデオをいくつか見れる。

他の講師陣は、参照画像の活かし方を教えたり、パースの合わせ方などを詳細に説明したりなど、初心者~中級者にも有用なコツを披露してくれるのだが、キム・ジョンギは

パースを意識しろ」以上のことを何も言わないそんなことは、美術の教科書の最初に載っていることである。

カマトトぶっている可能性もあるにはあるが、そうではないだろう。天才キム・ジョンギにとって、画を描くこととは歩くことや呼吸をすることと同じで、自然にできることなのだ。

そこに秘密はなく、才能と資質からもたらされた圧倒的なハードウェアの性能があるだけである。

キム・ジョンギのような天才は何が凄いか

グリズリーベアは、パンチの打ち方もタックルの仕方もなにも知らないが、それでもUFCの王者を瞬殺できる。なぜなら、圧倒的なパワーを持っているからである。

シュルトも流石にそこまでではないが、近いものがある。彼は試合中、何も特別なことをしない。ジャブと前蹴り、ときどき回し蹴り。

キム・ジョンギは、参照と下書きなしで画を描き始めることで有名だが、別に特別な訓練を経て、それができるようになったわけではない。

そして、人々がキム・ジョンギに言及するとき「生まれ持った才能」だとか「ギフテッド」だとか「天稟」だとか、資質にフォーカスしたワードで彼を称える。

しかし、「あなたは生まれ持ったものが凄いですね」と褒め称えることは正しいだろうか? 功績というのは、いつだって成し遂げたものに対して与えられる。それを持って生まれたものを褒め称えて、それがどうしたと言うのだろう。

隠しているだけかも知れないが、キム・ジョンギは過去に画が上手く描けなくなった時期もないし、表現方法に悩んだ形跡もない。

(「自分には才能がない」と悩む画家・アーティストは少なくない。才能に恵まれたものであってもである。しかし、キムは絶対にそんな気持ちを抱いたことはないだろう)

「キムジョンギがイラストレーターで良かった」

コンペティションなどはあるが、絵・イラストは対戦競技ではない。各々がライバルであることに間違いはないが、誰かが活躍したって、それが即あなたの食い扶持を奪うわけではない。

セーム・シュルトが嫌われたのは、彼の対戦スタイルが徹底的にリスクを排除したものだからである。メイウェザーやGSPのスタイルも、競技は違えどそれに近い。

メッシが六度目のバロンドールを獲得したが、仮に彼がサッカー界にいなければ、毎年違った顔ぶれがバロンドール選考を賑わせていたことだろう。

シュルトがいなければ、もっと多様な顔ぶれがトーナメントチャンピオンになっていたに違いない。

キム・ジョンギが天才であることに違いはない。そして、彼の才能がイラストレーターの分野で良かったと思う。彼の才能と作品は、人々を唖然とさせるだけで、誰かがチャンピオンになるチャンスを奪ったりしないからだ。

ただし、キム・ジョンギがいなければ、もっと注目を浴びていただろうと思えるアーティストはいる。こちらの動画で紹介されているサヴァン症候群の青年は、街の詳細を見ただけで鉛筆でキャンバスに再現する力があるらしいが、キムはそれ以上のことを平気でやってのけている。

(もちろんこの青年も凄いのだが、キム・ジョンギを見た後だと、感覚が麻痺して凄く思えないようになってしまっている)

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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