敵意帰属バイアスと陰謀論の関係

「きっとこの人は、私に悪意を持っているに違いない」と決めつけて、そう思い込んでしまうと、”この人”の発言が全て個人攻撃に聞こえてくる。
よくある現象である。
キングコング西野が話題にしていたが、このケースでは「いつもなら西野の宣材写真が使われるはずなのに、西野のイラストが使われていた。これを西野が疑問を呈したところ、そのイラストを描いた人を知っている人が、西野の攻撃を始めた」
つまり、攻撃者は「キングコング西野は、イラストの作者に敵意と悪意を抱いている」と判断したわけだ。実際はどうだか分からないが、ありそうな話だ。
この一連の人間の心理的傾向は、敵意帰属バイアスと呼ばれている。
陰謀論と敵意帰属バイアス
陰謀論と言うと、「NASAは宇宙人と秘密裏にコンタクトしており、それを隠している」などの珍説も含まれるが、多くはもっと比較的まともなものだ。
- ユダヤ人が世界を動かしている
- メディアが白人を迫害している
- ロシアがトランプを操っている
などなど。枚挙にいとまがない。
これらの陰謀論は、「集団Aが、敵意をもっている」とのバイアスとも捉えられる。
最初に言っておくが、「集団Aは集団Bに対して敵意がある」という知見は、実際に敵意や悪意があるかどうかは関係がない。
ステレオタイプな京都人の言動「ぶぶ漬け」は、表面だけ見れば単にぶぶ漬け(お茶漬け)をオファーしているだけだが、その実「帰れ」というメッセージである。
表面上の言動・行動・アクションだけで、敵意を持っているかどうかは判断できない。陰謀論も同じである。
ユダヤ人陰謀論の面白いところは、「ユダヤ人は、ユダヤ人の世界支配を隠すために、非ユダヤ人のなかからshabbos goyを選ぶ。彼らはユダヤ人と同じように成功できるが、あくまでもユダヤ人が彼・彼女を選ばなければ、成功できなかった」と、”例外”ですらユダヤ人の掌の上であると主張するところだ。
これは他人の善意だとか共助を、後の搾取や簒奪のためではないかと疑うのと、構造を同じくしている。
敵意帰属バイアスのメリット
夜な夜なスナックに通う人たちは、酒が飲みたいのではない。酒を飲みたいだけなら、コンビニで買って家で飲むほうが圧倒的に安上がりだ。
そうではなく、人がスナックに行く目的は「コミュニケーション」「会話」である。人とふれあいたいから、スナックに行く。
…陰謀論にハマる人たちのことを、「世界はあなたに無関心である」と認識するのが辛いため、「~~は私(及び私が所属する集団A)に敵意を持っている」と信じている人たちだと誰かが言っていた。
外敵の存在は、コミュニティの結束を高めると言うが、これはコミュニティ間のいざこざ・葛藤が、より大きな脅威によって優先度が下げられるためである。
アナロジカルな見解は好きではないが、帰属意識バイアスにしろ、陰謀論にしろ、前述の外敵の話は理解に役立つだろう。”大きな敵”あるいは”巨悪”と対峙すれば、目前の近々の些細な個人的な悩みなど、吹き飛ばしてくれる。
認識対象が、実際に巨悪であるかどうかは敵意帰属バイアスと関係がない。

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