フィクション概念と、「予告された嘘」あるいはカテゴリーエラー

フィクションと非フィクションを完全に分離することは不可能である。歴史書のように書かれた小説、科学論文のように書かれたデタラメは存在しうる。

神話は、現代人にとってフィクションだろうが、古代人(の大半にとって)、民族の起源史・歴史だったろう。

フィクション概念とは何かと考えたとき、我々はフィクションを「正直な嘘」と捉えられるのではないかと思う。

予告された嘘

嘘というのは、まず欺こうとする意思がいる。欺こうとする意思なしで誤りを言い伝えるのは、「偽り」と定義する。

「正直な嘘」とは矛盾したワードを提唱してしまったが、フィクションは作り話であっても、嘘ではない。フィクション概念において「嘘」は逆転し、「本当の話」が嘘になる。

これは、例えば小説において実在の地名を出すことと、フィクション概念は相対しない。フィクションとして出版されたものの特権は、「これは実際に起こったことなのか」「この技術は事実なのか」なる監査から自由であることだ。

「作中美人設定」ならぬ、作中事実・作中歴史概念が考えられる。

リアリティの新定義→必然味

リアリティは現実味と多くの場合訳されるが、必然味と超訳すればボヤけたリアリティ概念のモヤも晴れる。

社会を陰から牛耳る悪の組織のボスが、天才小学生である作品は存在しうるが、リアリティとは程遠いだろう。

リアリティの対立概念は、荒唐無稽(さ)である。

また、それまで善良な様子で描かれていた主人公が、急に殺戮を始めたとき、リアリティは発生しないだろう。

  • 登場人物の行動に納得できる
  • 登場人物が、そうしなければならなかったと思える
  • 「そうである」ことに納得できる。

「リアリティ」は、この三つで網羅できる。だから、リアリティというのは立ち上がるものであり、示されるものではない。文脈に大きく依存するからだ。

それまでの描写と照らし合わせて、次の行動に必然味があるかどうか。

もちろん、リアリティがあるからいい作品なのではない。ワンパンマンはリアリティとは程遠いが、それでもとても楽しい作品である。

フィクションであるというメタ情報を偽る

フィクションはそもそも嘘であることが前提なのだから、事実を書けばそれが嘘になる。だが、それ以外にも言外に情報が慣習的に載っている。

例えば小説ならば、それは通常、企業のプロモーションではない。ステルスマーケティングの意図があってはならない。また、ある政治的・宗教的・社会的理念実現のためのプロパガンダ・布石であることを隠してはならない。

「この作品・小説はプロパガンダではない」なる前提は、ソ連では違っていたことだろう。

また、我々は法によって統治されているわけだが、「この作品は、個人情報を暴くための作品ではない」「犯罪予告ではない」なる前提を、無意識のうちに保持している。ネットの個人サイトに公開されている小説などもあるのでややこしいが、法律違反の本は通常書店に並ばないからだ。

百田尚樹の日本国紀は、その点で我々が無意識に保持している前提を崩す「剽窃」のご法度を犯している。

作品を発表するとき、引用や参考・下敷きにした作品はあれど、オリジナル作品であることは前提である。クラシック音楽の場合は、元となる作品があるとすれば「編曲」になる。

芸術と娯楽とは、実用性がないものである。楽しみのために存在する。よって、「その作品を鑑賞すること」が目的・デッドエンドの人たちに向けて作られて消費されている。

フィクション概念とはズレるが、芸術作品と娯楽作品を合わせて「非実用的鑑賞用人工物」なるワードを提唱できるかもしれない。

未完成品・習作・レギュレーション違反

遺作は別として、未完成品は通常作品として発表されない。これは慣習である。

ブーレーズは、ピアノソナタを一楽章だか二楽章だけ出来たところで発表したが、あれは例外だろう。

難しいのは、未完成品なのか完成品なのか、内容だけでは判断できないことだ。事実、ブルックナーの交響曲9番は完成しているかいないかで議論が分かれている。

ブルックナーは楽章を3までしか書かなかったが、三楽章形式の交響曲は珍しくない。

また、形式の水準に至っていない作品というのも、通常は発表されない。プロならなおさらである。

カテゴリーエラーなるワードがあるが、「属すべきカテゴリーが未だに存在しない上でのカテゴリーエラーのような」作品は、未熟と言われたり失敗作と言われたりする。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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