現象と法則 構造主義科学論

ホンマでっか!?に出演している池田清彦が書いた本「構造主義科学論の冒険」を読んでいる。

著者は構造主義科学論者を自称しており、科学は唯物論を前提とする考えを退けている。

(客観的な真理が存在し、科学とはその真理を追求するのだという信念)

例えば、統計あるいは統計的手法の何が尊いのだろうか? それは、統計的結果に応用可能性・非一回性があると信じられているためだ。

統計そのものに価値はない。それは価値の転倒である。

真理と客観性

信仰者にとって、信じている者にとって、聖書の記述とは真理である。池田は、科学と宗教は「記述の方法」によって区別できる(方法もある)と信じている。

宗教は「神」とその他の名称の関係を記述し、科学は現象や出来事間の関係の記述で成り立っている。そう区別できると池田は考える。

では、迷信と科学の違いは何か? それは「確度」の違いと池田は考える。妙な造語だが、例えば赤ちゃんの夜泣きを「虫封じ」でなおさんとする方法は、確実性が低く、ほぼ失敗する。

これに比べ、科学的記述…例えば、ガソリンに火のついた棒を投げ込めばほぼ確実に火がつくが、これは前述の「迷信」と比べて確度が高い。

(というより、確度が低いものを迷信、確度が高いものを科学とする二分法を池田は提出している)

池田は「科学者は、科学なのか迷信なのか、そういったことを考える=思弁を科学者は好きでなく、実験=操作を好む」と、面白いことを考えている。

それはそうだろうと思う。「真理など存在しない」と考えるより、「科学は客観的真理を探求する学問だ。そして私は、その真理を探求する」と考えるほうが、より自然で、情熱に値する態度だろう。

観察できるもの

池田は、素朴実在論科学的実在論にこう反論する。

「白黒のレントゲン写真は、素人がみればただの白と黒の写真でしかない。しかし、専門家(ここでは医者)が見れば、それは癌の徴候として目にうつる」

つまり、実在ではなく認識が先立っていることと池田は主張している。

ここから池田は、フッサールの個的直感への言及に移行する。目の前に存在するカラスが、ほんとうに実在しているかはともかく、根拠が無限後退してしまう点はともかく置いといて、外部世界は観察できる。

(「外部世界は実在する」とはフッサールは言わなかった点を、池田は強調している)

科学とはなにか

科学とは何だろうか。それは、「コトバ」の同型性を言い当てるゲームであると池田は主張する。ただし、A=A(イヌとはイヌだ)だと同語反復になってしまい、有用性がない。有用性のある同型性を当てるゲームとは何か?

A+B=C ならば、同型性を言い当てるゲームでありながら、なおかつ同語反復ではない。化学式は、その点で有用であり、科学足りうる。

ここは面白い結論が導き出され、例えば2つの科学理論のコトバが違っていても、構造が同じであれば共役可能であるとの結論が導き出せる。

また池田は、非厳密科学なる概念も提唱している。物理学・化学の方程式は現象を形式化して、コード化されているため厳密化学だとしている。

構造主義科学論の優れた点は、科学的実在論を抜きに科学を説明できることである。科学とは、同一のコトバ、同型を取り出し、現象をコード化=形式化する営為である。現象から時間を抜き取って、因果関係(のようなもの)を記述する営みである。……

また、同型性=繰り返し=法則(のようなもの)を、現象と事物そのものに見出そうとする試みは、素朴・ナイーブだと退けてもいる。同型性は、あくまでも我々の認識の中にしないい。

ニュートンの逸話

有名な俗説「ニュートンは、リンゴが下に落ちる場面を見て、万有引力のアイデアを得た」

定かではないが、池田清彦が引用したもう一つの説(物理学者が言ったらしい)は、前の説よりももっともらしい。

「ニュートンは、月がいつまでも落ちてこないことから、万有引力のアイデアを得た」

物体は普通下に落ちるのに、月はいつまでも地球に落ちこない。ここで、地球外は地上と違う物理法則が働いているからだと考えず、ニュートンは天体も地上世界と同じ法則が働いているはずだと考えた(と、ある人は考える)。

月は落ち続けている。しかし地球にではなく、横に落ち続けているのではないか? 地球と月は、”万有引力”によって引き合っているのではないか? そう考えれば、天文学者が観察して見つけた惑星の動きを、ぴったり説明できる。

惑星の動きを、「太陽」「木星」なる固有名詞に頼らず、質量と万有引力という概念で、抽象化して説明しようとしたところに、池田はニュートンの非凡さを見る。

是非フォローしてください

最新の情報をお伝えします

桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。