ジャズとジャズミュージシャンの「即興」への問い【第六回】

「ジャズとは何か?」を考え出すと、たぶんクラシック音楽よりもややこしい。大多数の人間(主にはジャズファン・ジャズ評論家)は、ラグタイムをジャズの源流の一つとは見なしても、「ジャズ」とは見ない人が大半である。

ジャズと非ジャズを分けるものとして、「即興」のあるなしが問題になる。

即興と言っても、ゼロから1ではなく、特定のルールで、大多数は既に書かれたコード進行表に沿って即興は行われている。例えるならば、舞台設定だけ設定した、台詞の決まっていない演劇だと言える。

ジャズミュージシャン及びジャズ愛好家に、質問がある。

即興と非即興の区別できるか

リックという、メロディ未満の短いフレーズを指すワードがある。それぞれのアーティストには好きなリックというのがあり、意図的にリックを使ったり、気付かずにリックを多用してしまったりする。

リックは性質からして、非即興的である。その場で用意されたものではないからだ。

また、リックでなくとも体が何となく覚えている手癖のようなもので、コード進行に沿ってメロディを繋ぐこともありうる。それは即興と言えるだろうか?

意識的には、譜面的には覚えていないだけで、体が覚えているという状況。例えば、スポーツを例に挙げると分かりやすい。

スポーツ選手は刻々と変わる状況に応じて、フォーメーションやプレイを変える。ただし、ジャズの場合は取り決めがあるので、スポーツをジャズに例えるなら「共演者がひたすらアドリブを妨害してくるジャズ演奏」になる。

もしその作品が即興でないことが判明したら、尊敬を失うか

ジャズにおいて即興性は重視されているらしいが、ならばレコーディングで一発撮りせず、何回も撮り直したり、あまつさえ「良かった」と判断したところを繰り返したりするのは自家撞着している。 

それと、レコーディングにおける演奏のカットもおかしい。

即興と銘打たれた作品が、実は入念に計画されたものだとのちに判明したとして、ジャズファンは尊敬を失うだろうか?

(山下洋輔は、レコーディングは一発撮りしてるらしい。潔くて好きである)

即興のための即興になっていないか疑問に思っている。即興演奏でも良いのだが、即興でないと獲得できない芸術的価値がないとダメだろう。それがなければ、たんなる手抜きになる。

台本にある劇より、即興劇を好むか

松本人志が神格化されたのは、ガキの使いのフリートークコーナーに依るものが大きい。

まずハガキで松本に質問が送られ、松本はそれに答える。「ドメスティックパン屋さんって何ですか?」などの質問に、知らなくとも知っている程で答える。

面白いが、正直失敗していることも多い。ただ、松本は「うまくパーンと決まっているところだけじゃなくて、悩んでいるところを見てほしい」と言っている。

松本のフリートークがつまらないとは言わないが、仮に後々「あれは、実は台本があった。全部ではないが、オチは用意してから出ていた」ことが判明したら、ガッカリはする。ただ、演技力は凄かったなと、評価のポイントが変わる。

だが、これは例えばオーケストラ演奏があったとして、それが楽器からではなく予め録音されたものだと判明する場合に、ガッカリするのと同じ心理反応だと思う。前回に述べた、ライブ感覚・今ここの感覚・音楽の発生する現場に立ち会えているかどうかと信じられること。

即興演劇とジャズを好む人の両方のファンはいるだろうか? いれば話を聞きたい。

良い即興を、楽譜に起こしたいと思わないのか

即興演奏とは言うが、即興作曲とも言い換えられる。そもそも、音楽というのは即興芸術だったのであって、ヨーロッパにおいて楽譜が発生したのは教会の合唱という人間のエゴを排除する空間からであった。

人間の普遍的な感覚であるトニックの終止感などを協会の合唱団や司祭が見つけて、それがだんだんと固まる。

後に、ハーモニーも中世のヨーロッパ人は見つけ、それが二声・三声・四声と発展していく。

口伝による限界や、より正確な、より人間らしい揺らぎを排除せんとするイデオロギー の下、楽譜はどんどん発展していった。

ジャズに名演はあっても、名曲はないと言われる。過去の名演の再現をしても評価はされない。極めて現代アート的な価値観だが、これだと最初にそれを見つけた人が偉くなりすぎて、新たな演奏を探す必要がなくなってしまう。

クラシック音楽は、技術に偏向し過ぎていると批判する人もいる。だが、習得難易度・演奏難易度はそのまま権威性につながり、クラシック音楽という古いヨーロッパの音楽が生きながらえている理由の一つになっている。

譜面に起こしてはいないかも知れないが、ジャズは大して即興的ではない。なぜなら、日々の演奏や練習から「良い響き」「良いアドリブ」を演奏者は感じ取り、それを選んで本番に臨むからだ。

コメディ分野でも、一字一句事前に決められていそうな(そう感じる)ジャルジャルやM-1仕様の漫才より、吉本新喜劇やバラエティ番組の方が好きな人はたくさんいる。優劣を私は設定しない。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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