作為とフィクションへの問い

情報操作というのは、事実を捻じ曲げることだけを言うのではない。中国国籍の男が犯した事件を、ロシア国籍の女が犯した事件として報道する。これはもちろん情報が捏造されていると見なせる。しかし、その中国籍の男が、イスラム教徒のウイグル人だったとして、その情報を伝えずにニュースにすることは情報操作だろうか?

報道番組が、あるいはジャーナリストが何を報道するのか、そして何を報道しないのか。…「作為」は、不可避である。「主観」があるかどうかではなく、「客観的報道」は原理的に存在できない。

フィクションと作為

フィクションを「フィクションとして認識されたもの。『作りもの』のタグがついているもの」と考えても間違いではないのだが、それでは同語反復で、見識が広がらないので、別の観点・島からフィクションを考えてみる。

ドゥルーズは、哲学書を「フィクション」として読み直そうとしたらしいが、これは、「一つの定まった読み方」を否定し、「虚構性」を称揚する彼の態度ゆえらしい。

「真理のイデア」なるものを否定し、「真理のイデア」ではなく、「真理かのようなもののイデア」を真似て、解釈し、各々の「フィクション」を作り上げること。差異を楽しむこと、生成変化を楽しむこと…。ほとんどお題目のようだが、こんな人がいてもいいだろう。

「物語=語られたもの」が成立するためには、何かが省略されなければならない。語られないものがなければならない。

大分昔に、主人公がご飯を食べるシーン、排泄するシーン、薬の説明書を読むシーンなど、普通の小説ならカットするところをありったけ詰め込んだ本を読んだ記憶があるが、中々に退屈だった……。「世界全部を記述」しようとすると、どうしてもそうなるのだ。特に、小説(映画)などは情報が通時的に、縦軸で流れていくため、「過剰な情報」はむしろ物語を見えなくしてしまう。

私の言う「ノンフィクション」は、ニュースの原稿なども含意している。しかし、ニュースの原稿とカポーティの「ノンフィクション・ノベル」は、明確に区切れる。「読者=聞き手」を楽しませようとする意志を認めるか認めないか。

あくまでも「カテゴリ・タグ・メタ情報・ジャンル」の話になるが、書き手=情報の取捨選択者の「目的」も、「コンテンツ=対象物」のメタ情報になる。

なんで・なぜ

両親の「なんで勉強しないの?」という質問に対し、「勉強したくないから」と答えるのは不適切である。「なんで勉強しないの?」という質問を、「勉強しろ」というメッセージ・圧力だと解釈は十分にできるが、言葉の皮相だけを切り取っても、そのメッセージは出てこない。

あくまでも言葉の表面・皮相にとどまり、「なんで勉強しないの?」を解釈すれば

「あなたは勉強するべきである。そして、あなたは今、勉強していない。あなたが当然すべきことが分からないの?」になるだろう。

ここで「わからない」と答えると、「私は庇護と指導を必要とする未熟者である」と答えてるに等しいので、「すべきこと」が「わかる」まで「なんで」は続く。

(「勉強しなくてはいけないのは分かっているが、やりたくないからしない」は、「わかっていない」ことになる。なぜなら、ここに発生しているコミュニケーションは、意見の交換ではなく、道徳の上意下達だからだ。あなたは、「人を殺しても良い」と言っている人間と、対話を企図しないだろう。その「人を殺しても良い」と主張している人間が、自分の子ならなおさらそうだ)

「『人・集団・機関』=発信者」の「作為」というのは、「結果A」のために、「行動B」を起こしたと、聞き手・受け取り手が、「発信者」の作為として見出す「意図C」として、図式化できる。

(もちろん、この図式は仮想的)

…フィクションの不気味な点は、「意図」を聞き手が見いだせないとき、不気味な様相を呈すことだ。ある男が、架空の街の測量図を細かに製作したとして、我々は何を思うだろうか?ノンフィクション=歴史=記録なら、無意味さに我々は耐えられる。100年前の読めない言語で書かれている電話帳も、なんてことはない。

「何を考えているか分からないからこわい」というのは、半分だけ正しい。我々は、暴力的な脅威を覚えないものには恐怖を感じない。

「フィクションを語りたい」という欲望に、いかがわしい人間の性質を見出すのは変だろうか。古代の神話は、「読み物」として作られたわけではなく、語っている人間は、後はともかく初期の初期は本気だったろう。

(なんの根拠もない憶測だが、最初の「フィクションであることを前提にした物語」は、「訓話」だと思われる)

…「今から嘘を語ります」と、正直に宣言した最初の人間と、会話をしてみたい。

桜田真助
  • 桜田真助
  • 92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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