大道芸としてのライブ音楽を何が殺すか

ピアノを触ったことのある人なら分かるだろうが、プロのピアニストは狂っている。音数の多さ、正確さ、強弱、テンポ。ピアノのプロというだけで十分に凄いが、そのプロの中でもトッププロになると、「津波」だとか「台風」の類を見ている気になる。

同じ人間な気がしなくなってくる。

だが、そんなピアニスト(ピアニストに限ったことではないが)も、本番ではミスタッチをする。テンポをミスする。CDだと強弱をうまく付けられていたのに、本番だと上手くできていなかったりする。

「ライブの方が演奏が良い」ケースも当然あるのだろうが、大半の音楽家・バンドは、録音音源の方が演奏が上手い。音も良い。

では、我々はなぜライブに足を運ぶのか? CDやストリーミングでは十分ではないのか。

大道芸としてのライブ音楽

「綱渡り」の面白さは、落下する可能性に担保されている。桂枝雀は笑いを「緊張の緩和」だと言ったが、喜びもまた緊張の緩和である。

「落ちるかも知れない」「失敗するかも知れない」のハラハラ感から、対岸への到着で開放される。そのハラハラ感からの解放の喜びが、綱渡りの喜びである。

「危なっかしさ」が、エンタメ性の担保になっている。

(同様のことが、ジャグリングにも言える)

ピアノ・ヴァイオリン、あるいはクラシック音楽などの「生楽器」は、失敗が分かりやすい。音を外せば、すぐに分かる。

(エレキギターなどは、外しているか分かりにくい)

このハラハラ感は、ライブ音楽のキモだろう。

ざわざわCDで音楽を聞かずに、なぜライブに行くのか。大きな理由の一つである。

また、生楽器はアンプで調整したり、オートチューンで声音の音程を調整したりもできないので、その点で演奏の難易度はグッと上がる。クラシック奏者のプロは、例外はあってもほぼ皆子どものころから英才教育を受けてきた連中である。

生楽器と電子楽器

クラシック音楽の未来に関して、私は楽観視している。どの国もオーケストラは若い層のファンの取り込みに躍起になっているようだが、クラシック音楽にはバンド音楽や、DJのミックスにはない魅力がある。

正確には、「クラシック音楽の魅力」ではなく、生楽器・アコースティック楽器の魅力になるが、「電気・アンプを介さない生音」を奏でているという事情そのものが、クラシック音楽の魅力に繋がっている。

今はもうかなり近づいているが、木製ピアノと変わらない音色を電子ピアノが奏でられるようになっても、木製ピアノの需要はなくならだいだろうと予想できる。

打鍵→電気信号→音色への変換

ではなく

打鍵→音色

で、演者から観客へと繋がっているという観客の認識が、アコースティック演奏のキモである。現代に残っている数少ない電気やデータを介さない情報の伝達が、おしゃべりとアコースティック楽器の演奏になる。

完璧な演奏に需要はあるか

失敗があるからこそ、ライブが大道芸たりうる。とすれば、失敗が存在しないとき、大道芸としてのライブ演奏は終わる。

偶然性の音楽だとか、ノイズミュージックなんかも、失敗が存在しないジャンルだろう。

(機材トラブルはあるかも知れないが)

クラシック音楽の劇場だとか、そうでないバンド・ミュージックにしろ、お客さんが静かであればあるほど、演奏者の音が拾いやすければ広い安いほど、演奏の危うさは増していく。

下手なバンド演奏はいくらでもあるが、どの演奏もそれなりに聞けるレベルになる(shaggsは例外)。楽器の素人を集めてオーケストラを結成した例があるが、実験としては面白くとも、演奏は完全に失敗していた。

演奏は難しければ難しいほど、「成功」の喜び(観客)は大きいが、打ち込み音楽・録音技術・録音修正技術が発展しすぎた昨今、完璧な演奏に需要はあるのだろうかと疑っている。

カシオペアの演奏は、まるで打ち込み音楽かのようにリズムが完璧である。そして、打ち込み音楽家のように聞こえる。

ファミコンの音楽を大人数で再現する動画をYouTubeで見たが、これが凄いと感じさせるのは、大人数でアンサンブルをやっているからであって、難易度はより高くとも、一人でやってしまっては伝わらないのではないだろうか?

(この、エレクトーンでスターウォーズを再現した動画にしろ、凄いのは分かるが完璧すぎて凄さが解らなくなっている)

美人とは、”完璧な顔”が少し崩れたものだと聞いたことがある。21世紀の音楽(あるいは芸術)は、その”少しの崩れ”を追い求める営みになっていくのだろうか?

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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