反イスラムパラノイアの癒し方

カナダの右派ネットニュースフォーマット「Rabel Media」に、”カナダへのイスラム厳格法=シャリーア”導入を目論む男がインタビューを受けていた

イスラム過激派をインタビューしようという計画のもと彼がピックアップされたわけではなく、トロントで行われたパレスチナ支持を表明するInternational Quzs Dayなるものを祝うイベントにて、偶然Rabel Mediaが捕まえたものである。

(仕込みの可能性は十分にある)

動画のサブスクリプション(説明欄)には、「新鮮だがひどくおぞましい」という、アンビバレントな感想が記されている。

コメント欄を見ても、笑えるくらいにある意味で彼に好意的なものが散見される。

「彼の正直さが好きだ。西洋はこの男を見るべきだ」

「政治家とリベラルどもより正直だ」

「ついに正直なムスリムが現れた。タキーヤじゃない」などなど。

タキーヤというのは、身の危険がある場合はイスラム信仰を隠しても良いというイマーム=イスラム指導者の権威のお墨付きのこと)

困惑と喜び

欧米のイスラム教(ときどき政府と”リベラル”勢も巻き込まれる。まれにユダヤ人も)に対するパラノイアックな反応として、「彼らムスリムは、西洋社会の破壊を目論んでいる」といったものがある。

西洋のイスラム化を主張するムスリム個人や団体、そういった運動がないわけではない。しかし、大多数の彼らは穏健に暮らしたいだけの移住者である。

そして、例の男はパラノイアックな拒否反応のまさに具体例として、証拠として顕現したわけだが、どういうことだか彼に対する反応は引き裂かれている。

彼の言動はまさしく、欧米のイスラム嫌悪の生き証人として機能し、Rabel Mediaの視聴者層の懸念と合致するのに、”リベラル勢””LGBT活動家”の言動へのフォーカス動画に見受けられるような、一枚岩な反感が観察できない。

これは、それほど不思議な現象ではない。なぜなら、Rabel Media の視聴者は、”敵=脅威”の姿を確認できたからである。

敵がどこにいるのか分からない→どこから、どう、だれに、攻撃されるか分からないよりは、正体を視認できている方が不安は軽減される。

(反ユダヤ陰謀論の成立にも、この「敵の正体を知りたい」「敵が誰なのか知りたい」という心理が働いている。実際の彼らがどうなのかは、あまり関係がない。スマイリーキクチのように、ある日突然殺人者に仕立て上げられることも珍しくない。

嘘と不正直への嫌悪感

嘘・不正直さ・方便・アイロニー。

これらの概念は、人を必然的にパラノイアックな反応に導くメタ情報になる。

矛盾したメッセージを恒常的に受け取る環境では、言質が一つも取れないからだ。約束というものが成立しない世界である。成立したとしても、それはたまたま履行されたにすぎない。

ベイトソンの言うように、ダブルバインドが人間に大いなる負荷をもたらすのは間違いない。

北米白人保守層の少なくない割合にとって、ムスリムとは「口では平和と共生を唱えながら、その実、『我々の土地』の侵略と教化を目論む集団」である。ジハード=自爆テロなどの例外を除き、”彼ら”の悪意は表に出ない。

インタビューを受けたこのカナダ・北米のイスラム化を目指す男は、よく見れば服装も見すぼらしいし、頭も多分良くないだろうなというのが見てて分かる。

(英語がうまいとか下手とかではなく)

それに、一人のムスリムの意見が、全ムスリムを代表できるわけではない。そんなことは、よっぽどのアホでない限り、差別主義者でも分かっていることだ。

このシャリーアの北米導入と、同性愛者の処刑を主張する男が、”新鮮=Refressing”なのは、露悪的なほどに本音を言うその姿が、イスラムの脅威のイメージ像を縮小させているのも影響しているだろう。

「正体見たり、枯れ尾花」である。

怒りに対して怒りで返さないのがイラつく

怒りの表明というのは、原則的には自己開示を意味する。そして、自己開示とは他人と仲良くなるためのもっとも初歩的な心理学のテクニックでもある。

怒り感情の発露は攻撃にもなるので、「怒ればその人と仲良くなれる」とは言えないが、少なくとも怒り感情が必ずしも関係の悪化を助けるわけではないのは確かだ。

儀礼的な振る舞い・慇懃さとは、相手に対する無関心の宣言なのだ。あなたが何を考えているか、何を思っているのか、私は別に知りたいと思いません……。

アメリカのCNNだとか、日本の朝日新聞に向けられる怒り・憎しみ=継続する怒りとは、「不正直であると想定される主体」の態度に対する苛立ちに起因している。

政治的・社会的な意図・目的を隠しながら、メッセージを発する主体というのは、正直であることにトライしようともしない主体は。確かに存在する。政治家なら、その態度は美徳になり得るかも知れないが……。

桜田真助
  • 桜田真助
  • 92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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