「MMAレスリング」とは実際のところ何なのか

総合格闘技の識者・解説者の者たちから、「MMAレスリング」なるワードを聞くようになった。

一つにレスリングといっても、一般的にはグレコ・フリースタイル・フォークスタイルの3つの異なるルールのレスリングを指すが、ここにキャッチレスリング(キャッチアズキャッチキャンの名でも知られている)、またスモウ・レスリングを加えると、話がどんどんややこしくなる。

総合格闘技の試合において、「彼は優れたレスラーだ」「レスリングが上手い」と言うとき、誰もキャッチレスリングを念頭に置かない。

(”関節技がうまい””と選手を評したいときは、「彼は優れたグラップラーだ」「サブミッションがうまい」「柔術スキルがある」などと表現する)

私が今回試みるのは、”レスリング”の新たな意味・場の提供である。

相撲はレスリングではない

モンゴル相撲は、”モンゴリアンレスリング”と英語圏で呼び習わされているが、元々「レスリング」なるワードには、”取っ組み合う”程度の意味しかない。

そして、モンゴル相撲はズボンと服の袖を掴む行為が許されている。さながら柔道である。

このセンスからいうと、柔道だって「ジャパニーズジャケットレスリング」と呼ばれている世界は十分あり得た。では何故柔道が「~レスリング」と呼ばれていないのかは、本質的には慣習によるものでしかない。

シカゴ風ピザは、実質的にはパイである)

相撲は、英語圏でスモウレスリングと呼ばれている。そして、英語圏だと(ときどき日本人でも)勘違いしている人がいるが、相撲は掌底による打撃が認められている。

柔道であまりに強く足払いをすると指導が入る。しかし、けたぐりをどれほど強く試みたところで、指導は入らない。相撲のルール上あまり効果的でないので使われないが、相撲ではローキックも認められている。

(ついでにいうと、ハイキックも認められている。そんなことをしてしまうと倒されるので誰もしないが)

柔道はレスリングであるが、BJJはそうではない

柔道は「ジャケット」(柔道着)着用の上で

  • レスリング
  • サブミッション(関節技)

の2要素で成り立っている「レスリング」である。

押さえ込み(もあるし、一本もある)をレスリングではピンフォールというが、「相手を特定のポジションで固定させ続ける」能力は、総合格闘技において重要である。

パウンドが認められている北米ユニファイドMMAルールでは、グラウンドキープ技術は重要である。かつてフランスではグラウンド状態でのパウンドが認められていなかったが、このルールではグラウンドコントールよりも、動く中でサブミッションを決める技術のほうがより重要になる。

相撲は、前述の要素分解で記述すると

  • レスリング
  • ストライキング

となる。しかし、ストライキングにはパンチに「掌底のみ認められる」の但し書きがつく。

横綱の曙がMMAに参戦し、散々な結果を残したが、相撲のルールだけを見れば掌底ありの押さえ込みのないレスリングである。仮に、体重別でアマチュア相撲が日本で盛んに行われていた場合、そのアマチュア相撲から優秀な総合格闘技選手が輩出されることは想像に難しくない。

MMAレスリングとは

MMAレスリングとは、つまるところ

  • テイクダウン
  • グラウンドコントルール

この2つの領域・技術・能力である。

グレコローマンレスリングだと、足をとるテイクダウンがない。しかし、クリンチ状態からの、あるいは腰(バック)を取ったテイクダウンはある。

クリンチの上手い選手を「MMAレスリングがうまい」と評しても良さそうだが、MMAだと打撃があるのでそうはなっていない。

ソネンの言うように、レスリングでは反則になるような行為も、MMAでは許されている。そして、そんな動きをしても「彼はレスリングがうまい」「彼は優れたレスラーだ」と、解説者やファンから讃えられる。

(解説者・ファンにレスリングのルールを知っている者が少ないのも影響しているだろう)

MMAにおける”レスラー”の特殊な用法

MMAにおいて、「レスラー」あるいは「レスリングがうまい」というときは、大体にその選手にかつてレスリングの経歴があるか、なかったとしても、レスリングらしい動きをしているときである。

ムエタイや柔道出身で、テイクダウンやタックルがうまい人がいても、「良いレスラー」だとは言われず、「テイクダウンがうまい」となる。

この変な語法で思い出すのが、「サモアンフック」なるワードである。”ロシアンフック”ならば、まだ意味はある。しかし、サモアンフックとはようするに

サモア系・ポリネシア系の者が放つ豪快なフック

でしかない。

「テイクダウンとグラウンドコントロールがうまく、なおかつアマレス出身」であるとき、その人物はMMAにおいて「グッド・レスラー」と称される。

トリスタージムのZahabiなどは、「good at wrestle」などと、ingを外してワードを用い、「Wrestling」とワードが持つややこしさを回避しようとしている。柔道家でもムエタイ選手でも、「Good at wrestle」なら、それほど違和感は発生しない)

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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