保守化する好みをアップデートする必要性はあるか

インターネットで、「人は、繰り返し同じ音楽を聞くのはなぜか」というコラムを読んだ。

このコラムによれば、音楽はそもそも「繰り返し=リフレイン」が多用される芸術形式であり、音形が繰り返されることによって脳内の報酬系が活発になっており、なおかつ人は30歳を過ぎると特に好きなジャンル・好みが固まってきて、それまで聞いたことがある曲しか効かなくなる(傾向がある)。などなどの話をしていた。

大田松之丞(今は大田伯山)で、立川談志の良くないところは「アップデートをしなかった」ことだと二人が語っている。それに比べ、高田文夫は常に新たな情報を入れることを絶やさず、エノケンロッパからEXITまで網羅した笑いができるのは高田だけ(自称)らしい。

そもそも、新たなコンテンツ・作品に限らず、「新たな情報に触れる」ことがストレスフルなアクションである。

それに、思い込みかもしれないが、本を読んでも新たな情報を得られている気がしなくなる。年をとっていくと。

困ったものだ。

無意識の自動化

身も蓋もない知見だが、食事にしろ芸術鑑賞にしろ、ドーパミンなどの快楽系の報酬を無視できない。

美味しい料理は美味しい料理だが、満腹時だとどんな素晴らしい料理でも、口に入れることすら嫌になる。

しかし、報酬系は繰り返すごとに高まるが、ある一定の場所でその上昇が止まる。あとは下降線。

「人生を変えるような衝撃」は、通常20歳までに訪れる。もっと言えば、年を取ればとるほど感動することが難しくなってくる。

それに加えて、思い出は美化されていく。過去に聞いたなんてことはない曲が、ノスタルジーを通奏低音に耳に響く。

端的にいうと、新しい曲は聴かれやすさにおいて大いなるディスアドバンテージを負うている。

若い頃の自分の否定と肯定 

現在進行形でバカであるにも関わらず、「昔は俺もバカだった」と反省(のフリ)をする連中を軽蔑する。だが、過去の自分の肯定・首尾一貫した態度を若い頃と今の自分で保とうとすると、趣味嗜好も変わりにくい。

過去に株取引に失敗して財産を失い、再就職してその職場で出会った人と結婚した人がいるとする。この人物はきっと「過去のいろいろな失敗も、意味があった」と主観的にきっと感じる。

「過去の趣味嗜好」は、上述のシチュエーションと同様に作用する。

「今の自分」「現状」を肯定するとき、そこにあるのはそれまでの人生を「全一」的に扱う心理作用である。

「過去に読んできた小説や映画が、漫画を描くときに活きている」と漫画家は言うが、読んでないからこそ思いつけた発想はあったかも知れないと考える余地はある。

趣味の保守化の何がマズいのかというと、「時代から取り残される」からではなく、それが「他にあったかも知れない表現の否定」に繋がるからだ。

アップデートをしないことにより、人は無意識に「最近の曲はくだらない」「新しい情報を得る必要はない」と、自分のアクションを肯定していく、。始まりが、「新たな情報を脳に入れるストレスの回避」であっても、それがコンテンツ観として肯定される。

“「TikTok」を楽しめ”とは言わないが、「楽しんでいる奴はアホだ」ではなく、「楽しんでいる人達がいる」と、肯定的な態度で新たな現象を見つめた方が良いだろう。

セルフパロディと作家の終わり

過去の作品のパロディをやり出せば、その作家(芸術家)の終わりは近づいていることを意味する。例外は、戦略的にやった場合などである。

過去に書いた本の一節を集め、コラージュのような作品を作家が作る時、製作者が見てるのは「かつての自分」と「既存の読者」だけになる。

ファンというのは、応援する熱意や年数にも当然よるが、段々と「作品を鑑賞したいから」ではなく「その人の作品を鑑賞したい」へと態度が変わってくる。また、そのアーティストのかつての作品や、私的な言動なども新作を読むときにオーバーラップする。

理想的には、芸術があるべきなのは「作者が別の誰かに入れ替わっても、変わらない価値」を目指すことだ。誰がやったかではなく、作品そのものを問題とする態度。もちろんこれは理想でしか無いので、折衷すれば「作者が別の誰かに入れ替わっても、作品評価の振れ幅が限りなく小さい」なるステートメントになる。

「本の乱読及び、音楽ストリーミングサービスで知らないアーティストのアルバムを聞きまくること」を、わたしは推奨する。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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