噂と自己啓発と善意と「忘れられる権利」

「この商品(サービス)は、他社と比べて劣っていますよ」と言いながら売ってくる人はいない。「この商品にはこんなデメリットがありますよ」と言ったとしても、「この商品よりも他社製品のほうが優れてますよ」と言い出す奴はいない。そんなことを言ってしまうと、「じゃあその製品を買いますよ」となってしまう。

もちろん、消費者はバカではないので、セールスマンの言葉をすべて鵜呑みにはしない。話半分に聞いている。その話半分というのは、半分「噂」で構成されている。

噂というのは、不安定なもの、不確定なものである

三木清は「人生論ノート」でそう書いた。不確定であることは、可塑性・可変化性を意味し、いかようにも姿を変えられることを意味する。「噂」というのは「仮説」の一種だとも言えよう。

  • 仮説
  • 陰謀

「不安」あるいは「不快」を解消しようと、人は噂を作る(そしてその解消の試みは、決して完遂されることがない)。そして解消されないがゆえに、噂は残り続ける。事実であるかどうか、自然科学によって検証できるのか、政府の公式発表はあるのかどうかなどは、大きく影響する。しかし、それでも噂は残り続ける。

残り続けた「噂」は、「伝承」「都市伝説」「陰謀」となり、淘汰されて、最終的に「もっともらしいもの」「不安を軽減してくれるもの」「賛同者が多いもの」「報酬を産むもの」が覇権を握る。

自己啓発の可能性

いわゆる「自己啓発」がメディアによって問題視されたのは、高額な自己啓発セミナーの存在や、組織のための自己犠牲を強いるものがいたからである。

日本ではさほど話題になっていないが、ジョーダン・ピーターソンは自己啓発を健全なスタイルで実施している。バカ高い講演代をとろうと思えばとれるのに、御本人はあまり金銭に対して貪欲ではないのだろう。YouTubeに無料で過去の動画を大量に公開している。

「自己啓発セミナーの法的規制」ではなく、「自己啓発セミナーの自主的な健全化」を強く望む。メンターがいて、尊敬し、指導を受けて、それを次世代に繋げ…という善意のサイクルは、拡大再生産されなければならない。人は、贈り物を受けるとそれを誰かにお返ししなければならないと思う。美しいチェーンメールを確立しなければならない。

(問題は、その善意のバトンリレーが民族主義的なものの場合は、排外主義を産んでしまうことだ。もしかすると、我々は先祖・先人から「民族主義者・人種主義車からの贈り物」を既に受け取ってしまっているのだろうか?)

もしかすると、我々の「不満」だとか「怒り」の大半は、「贈り物をしたのに、そのお返しが返ってこない」ことのアレゴリーあるいは類型で説明できるだろうか?努力したのに報われない。ずっと付き合ったのに結婚してくれなかった。裏切られた。資本家に搾取されている。マイノリティと難民が生活保護を食いつぶしている/税金が無駄遣いされている……

スネークオイルセールスマンの誇り

前職で「ガンが治る自然食品」を開発したとのたまう健康食品の社長に出会った。ほんとうに開発したのなら、きちんと手順を含めて発表すればいいと思うのだが「法律でガンが治るとは言えない」などの理由で、公表していないと言っていた。

断言するが、彼は本当にガンが治ると信じている。過去に”治った”人も一人はいるだろう。…私が皆さんに伝えたいメッセージは「カリスマに圧倒される/魅了されることは、そんなに珍しくないですよ」である。

「疑り深い」というのは、それなりに自分の悟性に信頼を置いていることを意味する。また、何もかも疑ってしまえば、人は生活できない。そして、疑心家であることは、心の平安に良くない。

「疑うことなく。徹底的に何か信じている人」のチャームを、軽く見積もってはいけない。彼らは別にアホなわけではないし、あなたを騙そうとしているわけでもない、悪意があるわけでもない。

忘れられる権利と寛容性

インターネットに一度情報が流れると、それが半永久的にログとして残ってしまい、忘れられることがない。過去にやらかした差別的な言動が、有名になってからユスリの材料として用いられたりする。

過去の失態に対する寛容性うんぬんの前に、私は「あなたがたは若いころに、そして現在進行系でどんな失態を犯しているのか。見つめ直してください」と叫びたい。

無辜なるものだけが他者を断罪できるのだと言いたいのではなく、「あなたが断罪しようとしているその者は、《怪物》ですか?モンスターなのでしょうか?」という質問の突きつけである。

桜田真助
  • 桜田真助
  • 92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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