自己啓発セミナーと受講者が共有している嘘

自己啓発セミナーの講師達は、詐欺師ではない。 

もちろん、法律と照らし合わせて詐欺に相当する行為をしているセミナーもいないわけではない。だが、彼らは賢いのでそんな危険な橋を渡ったりしない。

自己啓発セミナーが凄いのは、講師が嘘をつくのではなく、受講者に嘘をつかせることにより嘘を隠蔽することである。

三日坊主と自己啓発セミナー

自己啓発セミナーに来る人間は、当然だが向上心が高い。そして、受講者が学ぼうとしているのは職業の個別的知識ではない。

セミナーにおいて語られるのは、普遍的な「心得」とでも許容すべきものである。

モチベーションあるいはやる気とも言い換えられるが、マインドセットや心得と言い換えた方が、受講者が求めているものにより近づく。

ダイエット器具を飼う人は、そのダイエット器具に痩せさせる効果があると信じて買う。映画館のチケットを買う人は、そのチケットで映画を見れると信じて買う。

自己啓発セミナーに高い受講料を払う人は、なにを信じているのか? 

彼らが欲しているのは心得・マインドセットのようなものである。

そして、受講者は「人は変われる」ことを信じている。

また、「やる気は持続する」ことも信じている。より正確に表現すれば、人は変われる・やる気は持続すると信じた人間しか自己啓発セミナーを受講しない。

まやかしの共有と嘘

自己啓発セミナーは高い買い物ではない。ただしそれは講師のいうように、あるいは受講者が信じているように「人は変われる」ことが本当ならである。

五十万円払えば残りの人生を気力と希望に満ちて過ごせるモノ・コトがあるなら、皆それを買うべきである。

自己啓発セミナーがこれほど隆盛を極めているのは、その商品が抗い難いほどに魅力的だからである。

セミナーで人は変われないが、その責任の追及先はセミナー先にではなく自分に向く。いつまでも変われないのは自分の責任であると受講生は言い聞かせる。

Delusional=妄想的な人間が、その妄想を真として扱う空間、それが自己啓発セミナーだ。

自己啓発セミナーの効力持続期間

世間から隔絶された空間で集中的に集団で勉強すると、選民意識やモチベーションが限りなく湧いてくる。

それが誇大妄想であると判明するのは、セミナー終了の三日後ごろから。あれほどあったやる気と自信は失せて、また元の怠惰な生活に逆戻りする。

やる気とモチベーションには往々にして持続性がないが、「三日間元気が出るセミナー」を何万円も出して購入する人はいない。

タチが悪いのは、なかには本当に過去の自分と決裂できているパターンが存在することだ。講師も知ってか知らずか、毎日目的もなくダラダラしていた自分、自分が嫌いだった頃の話をする。

「俺が変われたんだから、君も変われる」

少なくとも、講師は過去の悪習と決別できている。受講者のなかにも自己啓発の目的を完遂できたものがいるにいる。

だから、講師達にはなにもやましいところがない。サイコパスやソシオパスに分類されるような人でもない限り、やましい気持ちを抱きながら人は人を全力で騙せない。

自己啓発とメンター

しかし実際のところ、自分を変えたい人間はいる。彼らの要求を助けることはできないか?

人の性格は人格を丸ごと変える方法が確立されていれば、今ごろ世界は平和で満ちているだろうから、そんな方法はないと見ていいだろう。

しかし、急に人は変われなくとも、ゆっくりと変わることができるとは私は信じている。

ゆっくり自分を変えたくない。スイッチを切り替えるように急激に変わりたいと願っている人に勧める方法を私は提示できないが、自戒もこめて、「焦らず変わろう」と提言したい。

また、インターネットに転がっている無料の記事や動画を栄養ドリンクを摂取するように定期的に試聴すれば、金もかけずにセミナーに参加したのと同じ効果ぎ得られる。効果が切れたら、もう一度違うコンテンツを消費すれば良いのだ。

反自己啓発的自己啓発

自己啓発には二種類ある。

  • 「今の自分を変えて、なりたい自分になろう」
  • 「自分を愛そう。人格改造なんて目指さないで、現状に満足しよう」

相反するメッセージだが、二つとも自己啓発と見なせる。自己啓発とは見做せなくとも、同じ類の言説だとは見なせる。ちょうど、哲学と反哲学が双方「哲学」としてカテゴライズできるのと同じ原理。

英語圏ではモチベーショナルスピーチなるカテゴリーがあるが、どのスピーチも「やる気を出せ」だとか「今すぐ勉強しろ」など馬鹿みたいなメッセージは発さない。

自己啓発にやたらと反発する人間は、メンタリティ的には自己啓発セミナーの講師陣と同じものを持っている。改革派で、既にモチベーションに溢れており、克己心が高い。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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