「できない病」には積極的に罹れ

ふざけたポスターだと思うが、もっと悲しいのは、これを真に受ける従業員がいることである。できない病…キャッチーな言葉だ。

こちらのブログによると、とある事業所に貼られていたポスターらしいが、「できない病」と一般的な従業員の態度を、「病気」扱いする経営層に腹が立つ。

「ヒト・モノ・カネ・ジカン」を、知恵を絞り出して考えろというわけだ、経営陣は。ふざけるなと言いたい。だが、学生の方(もしかすると社会人でも)は、このポスターの気持ち悪さが分かりにくいかも知れない。

どこがどう気持ち悪いか、数字を交えて説明する。

1.人手不足を過労で解消しようとしている

上司から相談を受け、「ヒトがいないからできない」と返答したとする。それに対し「そこをどうにかするのがお前の仕事だろ!」と言われることほど、暴力的なものもない。

なぜなら、それは従業員の仕事ではないからだ。社長の仕事であり、あるいは管理職(名ばかり管理職ではなく)の仕事である。

なんの決済権もないのに、お金のながれも教えてくれないのに、もっと言えば予算がどのくらいあるかも教えないくせに、人事関係の知恵を出してくれと言う。

それに、このポスターからは「人手不足を従業員増員で解消する」発想の欠如も見受けられる……。人手が足りないからと、残業する風潮はそろそろ止めた方がいい。「雇用人数を増やす」アクションを、日本の企業はなぜ最終手段かのように思っているのか? 謎である。

十中八九、ヒトを「コスト」とてしか見ていないからだろう。……悲しい限りである。

2.設備投資する気が見られない

前職時代、1万円もあれば管理ソフトを買えるのに、それすらも買わず延々と十年以上前の時代遅れな管理ソフトを使っていた。一記入ごとに保存をしなければいけないタイプの古いソフトで、グーグルドライブの完全下位互換だった。

設備投資はカネがかかる。すぐには用意できないのも理解はできるが、「設備や商品がないからできない」との”言い訳”を禁止するような会社は、間違いなくカネがあったとしても設備投資をしない会社である。

設備や商品に頼らないで業務拡大をするためには、方法が2つしかない。新規性のあるアイディアをひねり出すか、人力でどうにかするかである。

一般的従業員がビジネスアイデアなどポンポン思いつくわけもないので(そもそも、そういうのが嫌で皆サラリーマン・雇われの身になる)、結果的に人力・過労を選択することになる。…事実上、選択肢などないのに、経営層はあたかも「お前らがアイディアを思い浮かばないから、人力に頼らざるを得ないのだ」と責任の主体をすり替える。

繰り返すが、アイディア出しは経営層の仕事であって、従業員ではない。

3.予算がなくとも何かやれと言う

99.9%の会社は、業務中に自由時間などない。そして、「カネがないからできない」を”言い訳”として、「できない病」の症例として提示するということは、「家でアイディアを練ってこい」と言っているに等しい。

Googleだとかゴールドマン・サックスならともかく、家に帰ってまで仕事を考えたくなるような給与を会社は与えない。日本人の悲劇性は、その生真面目さである。いくら叱責されようと、失望されようと、屈辱を感じようと、主観的な意味において、給与以上の仕事をしてはならないのだ。

なぜなら、あなたの給与に対するオーバークオリティが、結果的に不当競争を生んでしまうためである。積極的に「できない病」に罹ろう。

予算がないのは、あなたの責任ではない。株主と経営層の責任である。あなたは有限責任すら負っていない。

4.時短を急かしている

真面目な人間は損をするというのは、社会人になればみんな直感的に分かることだ。相手の要求に善意から乗ってしまえば、過剰サービスを要求されるか、一人だけ不当に仕事量を増やされるかである。

「時間がないからできない」を言うなという命令は、言い換えれば「時短をしろ」である。繰り返すが、業務の上でいくら時短をしようと、あなたに還ってくるリターンはほんのわずかである、その努力を、副業なり、個人事業なりで発揮したほうがよっぽど効率がいい。

まとめ

「できない病」の気持ち悪さは、責任を従業員に全て押し付けようとする態度を隠そうともしていないところである。一時期「やりがい搾取」なる言葉が流行ったが、「できない病」はそれより更にワンステップ進んで、「奴隷の倫理」を美徳とし、「自由人の倫理」を「病気」扱いしている。

できない病には積極的に罹り、それを感染させて行ったほうが良い。それは、日本と世界のためになる。

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桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@yamakawa6500
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

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