理想的な対戦型カードゲーム(TCG)とは何か?

遊戯王やデュエル・マスターズ、ハースストーンなど、対戦型カードゲームには、「メタ」という概念がある。
Aというデッキタイプがあったとして、そのAとの対戦に勝つことを想定したデッキは「メタ・デッキ」と呼ばれる。一般的には「メタ」というと、ある言説の上位のもの、高次のものを指すが(『メタ・フィクション』の『メタ』はまさしくそれだ)、メタ・デッキの「メタ」の用法とは、ズレている。
ゲームの「ルール」と「メタ」
(カード)ゲームのルールは、そのまま我々が生きているこの世界の「物理法則」に相当する。そのルール内で、ブルーアイズホワイトドラゴンを召喚したり、ヒーローパワーで相手に1点ダメージを与えたりできる。
ポーカーや麻雀などは、数ヶ月おきに劇的にルールが変わったりしない。
対戦型カードゲームは、頻繁にルールが変わる。カードプールが変わる。ポーカーや麻雀に例えるなら、対戦型カードゲームは、急に「役」が増えたり減ったり、そもそもの初期手札の数が変わったりと、目まぐるしいものだ。
ちょうど、我々が物理法則を超越できないように、ゲームのルールも超えられない。あるとすれば「バグ」がそれに該当するだろうが、「バグ」はアクシデントであり、ミスである。
また、ゲームには「裁定」が存在する。アプリゲームなら勝手にプログラムが判断してくれるが、遊戯王やMTGはそうではない。
将棋なら、「千日手は禁止」「二歩は反則負け」など、一度「裁定」を下せばそれですむが、対戦型カードゲームでは、ほとんど「矛盾」の故事と同じようなシチュエーションに頻繁に出くわす。
その場合は「裁定」あるいは不文律のようなプログラム、または強制的な中断が発生する。ハースストーンにおいて、いわゆる「無限ループ」が発生すると、プログラムはある地点で中断するようになっている。
理想的な対戦環境とは
遊戯王が「じゃんけん」と揶揄されていた時代があった。基本的に対戦型カードゲームは先行が有利なのだが、遊戯王の場合はマジック・ザ・ギャザリングやデュエルマスターズ、ハースストーンその他のTCGに一般的にある「マナ」の概念がなく、「強い」カードを1ターン目から展開しやすいという特徴がある。これをルールの欠陥と見るか、スピード感と見るかは価値観次第だ。
遊戯王には「先行1ターン目」に勝利が決定してしまうような展開が、頻発していた時期があった。
もちろん、好きなゲームを各々楽しめばそれで良いとは思うが、流石に先行1ターン目でし決着してしまうようなゲームは、「じゃんけん」と何も変わらない。人は、じゃんけんをやりたくてTCGをするのではない。
対戦型カードゲームにおいて理想的な対戦環境とは、私にとって
- 「実力」が反映される
- デッキの相性差による「勝率」が、限りなく低い
- 「上位デッキ」に多様性がある。
この3つを満たしていることである。麻雀やポーカーに控除率(テラ銭)がなければ、ゲームを繰り返せば繰り返すほど、最適行動をとっているプレイヤーはより多くの「勝利」をおさめ、利益を手にする。そうでないプレイヤーはより多く負け、金銭的に損する。
これは運営元が目指すべき対戦環境ではないだろうか?
(この条件を達成するためには、「有効そうに見える選択肢」が、プレーヤーに出来る限り多く見えなければならないだろう)
また、Aというデッキがあったとして、Bというデッキが「対Aデッキに対して勝率90%」などという状態は望ましくない。とくに、「環境上位デッキ」にそれがあってはならない。繰り返すが、「じゃんけん」をしたくてTCGをやる奴なんかいない。
また、「多様性」も理想的な対戦環境の条件として提示したい。シナジーを無視した無茶なデッキも「デッキ」だが、それらが「下位デッキ」になったとしても文句は言わない。しかし、「上位デッキ」群(勝率を50%以上にキープできるポテンシャルのあるもの)には、多様性が存在するのが望ましい。人は飽きるからである。また、同じ条件・ルール・レギュレーションで「ゲーム」を極めたいものは、麻雀やポーカー、あるいは将棋・囲碁をすればいいのだ。
対戦型カードゲーム(TCG)らしさ、それでしか楽しめない・体験できない体験の提供を強く望んでいるのは、大多数のプレイヤーの意見・要望である。
最後に経済面に触れる
カードキングダムの創設者・社長として、毀誉褒貶が定まらぬことでも有名な池っち店長。「遊戯王」と版元である「コナミ」をたびたび非難していることで有名だ。
「リンク召喚など、ルールが難しすぎる」など「初心者の入りにくさ」を理由に、遊戯王を何度か批判しているが、彼の言葉で私は強く覚えているのは、「必須カードが高すぎて、子供がデッキを組めない」と、「E・HEROエレメンタルヒーロー プリズマー」の希少性と市場価値を問題視していた。それもかなり強い語調で。
プリズマーの初出は、5700円するゲームの付録品である。2007年に出たカードだが、前記の遊戯王カードwikiによると、一枚6000円もするほど高かったらしい。これでもまだ、「ネタカード」ならいいのだが、プリズマーはE・HEROデッキにほぼ必須のカードであり、しかもE・HEROといえばアニメ「遊戯王GX」の主人公が使用しているテーマだ。主人公デッキの必須キーカードが6000円もすれば、怒りの矛先を向けてもおかしくはない。
デッキを組もうと思ったとき、あまりにお金がかかるものは、好ましくないだろう。ハースストーンの良いところとして、不要カードが「分解」可能で、カードの作成に使える「魔素」に還元できる点が挙げられる。スマホゲームの中には、お目当てのカードあるいはアイテムを手に入れるまで、延々とガチャを回し続けなければいけない物がある。
生き馬の目を抜くようなガチャ要素は、ゲームを恨む理由にはなっても、愛する理由にはならない。

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2件のピンバック
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