民族概念のあやふやさ・自己認識・宗教

アメリカの人は「〜系〜人」など、ルーツ・オリジンを認識した上で国民意識を形成する。単純に「私はアメリカ人である」と答える・自己認識する場合もあるだろうが、新大陸の国家以外ではそれが通常である。

日本育ちの外国人が、「日本で育っているのに日本人として扱われない」ことに言及するのはよくあるが、複数の集団が合わさって形成された国家ではないのでそれは不可避なのだ。中国のような諸民族が行き交う環境でもない。

もちろん日本も、遺伝子プールを見れば複数の集団の渡来により形成されていることがわかっている。彼らは「日本人」だとは思っていなかったろうし、子孫もしばらくは現在の日本語とは随分異なる言語を話していたに違いない。

だが、日本民族・ヤマト民族・日本諸語という概念はいつからか成立した。外部の「異民族」あるいは「”異なる人”たち」なしに民族概念は成り立たない。

日本語は難しい言語だと言われるが、韓国人にとっては世界で一番簡単な言語であり、モンゴル人やトルコ人にとっても容易である。

民族概念は、習慣及び文化、血筋によって決定される。日本だとわかりにくいが、一つの国家に複数の言語集団がいることは珍しくない。

だが、ロシアのトルコ語話者は段々とロシア語を話すようになっているし、特別なアイデンティがなければ少数言語・不利言語を学ぶ人はどんどん減っていく。

トルコ語諸国を見るとわかりやすいが、彼らはもともとモンゴル語・ペルシャ語・ギリシャ語を話していた人たちである。

宗教と民族と純血

中国の「回族」は、民族概念を考える上で興味深い。彼らと「漢族」を分けるのは宗教だけだからだ。もちろん家族の習慣は違うので、民族が違うと考えられるが欧米基準ではムスリムだからといって別「民族=ethnicity 」と捉えられたりしない。

(インターネットで、ドンガン人=キルギスに住む漢族のムスリムが「回族またはイスラム教徒の中国人です」と自己紹介しているのを聞いた。民族は重なるのだろう)

同じことがボシュニャク人にも言える。彼らはイスラム教に改宗したセルビア人である。ただし、彼らを「民族を裏切りオスマン帝国に与したもの」と捉えると、少し悲しくなるが。

(クロアチア人の場合は、カトリック化したセルビア人)

ウクライナの民族主義を立ち上げようと思ったら、ロシアとの違いを立ち上げるしかない。ウクライナの民族主義者はロシア人をモスクヴァ人だとかそんな名前で呼び、よりピュアなスラブ民族であることを誇示する。

確かにそうである。純血さで言えばウクライナ人はより純血である。悲しいのはその類のステートメントは西欧社会で受け入れられないことだ。

植民地と民族意識・トルコ化

アゼルバイジャンとアルメニアが戦争真っ只中の時期にこの記事を書いているが、トルコ人というのは曖昧な存在である。アジアからヨーロッパ(アナトリア半島)までトルコ系(テュルク系)の人が存在しているが、彼らの多くはトルコ化(=turkifified)された現地人であって、突厥の人たちとは似ても似つかない。

元々はペルシア語やロシア語、ギリシャ語、最初期でいえばモンゴル語を話していた人たちが、支配層の言語でありリングワ・フランカでもあったトルコ語を話すようになり、いつしかアイデンティが移り変わっていった。

アナトリアのトルコ人は偽トルコ人だと言われるが、ウイグル地域だって元はイラン系の人が住んでいた地域である。トルコ系ではなく。

思うに、ユーラシア大陸において人種(この概念も科学的な正当性は与えられないが)、形質的な意味での人種のリプレイスメントは発生していないのではないかと思う。ローカルはいつもローカルらしい顔つきをしている。少なくともここ3000年はそうだろう。

アメリカ大陸や、アフリカの一部で「ローカル人の形質の大々的変化」が観察される。千年前のアルゼンチン人はあんな見た目をしていない。南アフリカのケープタウンの人もあんなに白くない。

是非フォローしてください

最新の情報をお伝えします

桜田真助
  • 桜田真助
  • Twitterアカウント:@kingofgatayama
    92年大阪生まれ。なにもかも分かったような気に最近なっていて、これはダメだなと焦って疑問を探している。プロフィール画像は友人(@leilamarinacb)から頂きました。

1件のピンバック

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です